【取材の裏側 現場ノート】新日本プロレス5日の後楽園ホール大会で、約2年半ぶりに声出し応援が解禁された。50%の観客制限が設けられたがチケットは完売。歓声が飛び交う熱狂的な空間の復活は、取材する側も感慨深いものがあった。

 その会場でひと際大きな歓声を浴びていたのが、内藤哲也だ。入場曲の「STARDUST」が流れると同時に大きな「内藤」コールを受けた〝制御不能のカリスマ〟は試合後に「最高の空間というのはレスラーとお客さまが一緒につくり上げるものだって言ったことがあったけど、今日試合して改めて感じました」と振り返った。

 実はこの日に至るまで、内藤は無歓声の会場で苦悩を抱き続けていた。「この2年半、自分が楽しまなきゃお客さまを楽ませることはできないと思ってきたから、自分が楽しもうと思いながらリングに上がってました。けど、どこかで物足りなさというか寂しさもあったわけで。試合をするたびに100%満足して、よしまたこれを目指して頑張ろうというモチベーションにはならず、一体これがどこまで続くんだろう…って。なかなかモチベーションを上げるのが難しい状況でしたよね」

 かつて熱心な新日本プロレスファンだった内藤は常に〝お客さま目線〟を忘れない。だからこそプロレスを心の底から楽しめていない自身に対してもどかしさを覚え、コロナ禍のなかでも会場に訪れて拍手で応援してくれるファンに対しては後ろめたさを感じてしまっていた。「どうしても100%テンションを上げきれない自分がこのリングに立つことが、果たしていいことなのかというのは思いましたね。100%楽しんでない男がリングに立ったところで、見てる側も楽しくないわけで。じゃあ俺ってこのリングに立つ資格あるのかな、とか」

 レスラーもファンも、誰もが待ち望んでいた後楽園大会を終えて、内藤には一つ反省していることがある。「コロナ前は入場曲と同時に『内藤』コールが当たり前だったので、久々に聞けてグッと来るものはありましたよね。ちょっとテンション上がりすぎて、いつもよりも早いタイミングで出ちゃいました。早く出たいな、早く出たいなと思ってついつい…焦っちゃいましたね」。いつものように焦らしに焦らして入場するつもりが、トランキーロでいられないほどに気分が高揚してしまったというのだ。

 次回の声出し応援は10月16日の長岡大会で実施されるが、まだまだ段階的でかつての日常を取り戻すには時間がかかるだろう。「リングに立つレスラーも歓声がある方が楽しいし、コロナ禍のなかでも会場に来てくれるお客さまにも声を出すことでもっと楽しんでほしい。やっとですけど、大きい1歩でしたよね。じゃあこれから2歩、3歩、4歩と行けるのかははっきり分からない状況ですけど、とりあえず意味のある1歩は踏み出せたんじゃないかと思います」。超満員の会場でファンとともに大合唱できるその日を、内藤は焦らず、しかし胸を躍らせて待っている。

(プロレス担当・岡本佑介)