大木金太郎さん 韓国国立墓地埋葬で心配される「墓荒らし」

2020年06月10日 16時35分

アジアヘビー級のベルトを巻く大木金太郎さん(1972年)

「原爆頭突き」を武器に人気を集めた名プロレスラーの大木金太郎さん(2006年死去、享年77、本名=金一)が5月下旬、韓国の国立大田顕忠院の国家社会貢献者墓域に埋葬された。顕忠院にはスポーツ界からはベルリン五輪(1936年)のマラソン金メダリスト・孫基禎さんらが眠っているが、プロレスラーでは大木さんが第1号となる。しかし、専門家によると、心配なことがあるという。

 大木さんは全羅南道の貧しい島に生まれ、母国の英雄である力道山さんに憧れ、貨物船で日本に密入国。その後、日本プロレスに入り、ジャイアント馬場さん、アントニオ猪木氏とともに力道山道場の「三羽烏」と呼ばれ、スターレスラーとして活躍したのはあまりにも有名だ。

 韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏はこう語る。

「韓国でもその名は一プロレスラーを超えた存在です。大木さんは全羅南道の電気も水道もない貧しい島に生まれています。その島の中でも大木さんの村にいち早く電気が通ったのは、朴正熙大統領が大のプロレスファンで、故郷に錦を飾りたいという大木さんの願いを聞き入れたからという逸話も残ってます」

 日本人には想像もつかないほどに、韓国は今も激しい地域対立があるという。

 但馬氏は「慶尚北道出身の朴大統領は露骨なほど全羅南道に対しては冷淡で、そのため同地区は開発が遅れたともいわれていますから、これは例外的なことです。また、1980年、あの光州事件の発端を作り、現在の全羅南道出身者から鬼のように思われている全斗煥大統領とも大木さんは親交がありました。そんなことも含め、大木さんは、国家功労者が数多く眠る顕忠院に埋葬される資格は十分にあるはずですし、これ自体はとてもおめでたいことと思います」と言う。

 しかし、但馬氏には気になることがあるという。大田顕忠院では昨年6月、民族問題研究会という市民団体による汚物投擲事件があった。

「民族問題研究会は膨大な親日派リスト制作で知られる親日派狩りのエキスパート団体です。ここでいう親日派は併合時代の日本統治に協力的だった朝鮮人のことで、現在の韓国では売国奴と同義語となっています。同グループは顕忠院にある親日派分子の遺骨を追い出せという運動を行っており、まず手始めに、金昌龍(キム・チャンリョン)の墓を襲撃、ペットボトルに入った糞尿を墓石に浴びせるなどの暴挙を働きました。民族問題研究会はこれで満足したわけではなく、再度の親日派墓所の襲撃をにおわせています」

 金昌龍氏は併合時代に日本軍の憲兵をしていたことがあり、それが親日派認定の決め手となったようだ。

 そんな中、韓国紙「朝鮮日報」が先日、衝撃的なニュースを報じた。韓国与党・共に民主党の金炳基(キム・ビョンギ)議員と李寿珍(イ・スジン)議員が先月下旬、ソウル市の国立ソウル顕忠院を訪れ「親日派の墓を破墓(墓を掘り起こすこと)するのは当然のこと」として、「親日派破墓法を成立させる」と述べたという。

 死後、顕忠院に埋葬されるということは、戦後の韓国の建国に何かしらの功績があったという証拠だ。それなのに死者にムチ打つ文化のない日本人には、信じられない光景だ。

 但馬氏は「こういう騒動を抱えた顕忠院が、果たして大木金太郎さんの安眠の地にふさわしいのだろうか、一プロレスファンとして一抹の不安を覚えます。いや、日本でも活躍した大木さんが、いつ突如、親日派認定され、遺骨が追い出されるかもしれないというのが韓国の現状なのです」と危惧している。