元K―1王者のピーター・アーツ(51=オランダ)が独占インタビューに応じ、日本格闘技界への〝愛〟を爆発させた。他ジャンルや海外団体の勢いに押されるキックボクシング界の現状を憂慮するレジェンドは、恩返しのため第二の故郷でジムと新イベントの立ち上げに奔走中。〝人材流出問題〟にも言及した上で、ボクシングルールに準じて行われる「超RIZIN」(9月25日、さいたまスーパーアリーナ)の朝倉未来VSボクシング元世界5階級制覇王者フロイド・メイウェザー(米国)のエキシビション戦についても独自の見解を述べた。

 ――最近は日本に滞在することが多くなっているようだ 

 アーツ そうですね。今はオランダとこっちを行ったり来たりしています。東京に家があって、子供たちも日本で試合をしていますから。子供? 21歳の双子で娘のモンターナ・アーツと、息子のマルシアーノ・アーツ。2人は10月に京都で行われる大会でキックの試合をすることになると思います。いつか、娘をRIZINに連れていきたいと思っているんです。

 ――日本でジムも開く予定だとか

 アーツ 今(物件を)探しているところです。新宿や渋谷辺りで。ジムだけじゃなくて、日本でキックのイベントをやりたいと思っています。

 ――それはなぜ

 アーツ 日本のトーナメントは、どうしても出場選手は日本人が多くなるじゃないですか。だからそこで終わるのではなく、国内のトーナメントで勝った選手が海外に挑戦できるようにしていきたいんです。まずは自分のジムをつくって、自分で日本人のチャンピオンを育てて、その選手を欧州の団体に送り込みたい。理想は世界中の各ブロックで勝ち上がった選手たちが、決勝トーナメントを戦う形です。

 ――そこまで日本にこだわる理由は

 アーツ 日本が私を大きくしてくれたから、その恩返しがしたいんです。キックボクシングは日本発祥の競技。それが今、東南アジアや欧州の勢いに押されているんです。マーケットだけではなく、例えば戦術面でも欧州が日本を上回っています。でもそれも、もともとはわれわれが日本から欧州に持っていって発展させたものなんです。だから、格闘技を35年やってきた自分の経験を日本に返したいんです。

 ――そこで欧州でのアーツ選手のネットワークが生きると

 アーツ 私はどこの団体でも話すことができますから。(欧州最大キック団体の)GLORY? もちろん。ものすごいポテンシャルがあるのに、まだ有名になっていない選手は日本にもいる。そういう選手が海外にも挑戦できるようにしたい。アイデアはまだ完全ではないけど、探りながらやっていきたいと思っています。

 ――一方で、才能あるキックボクサーがボクシングに転向する例が増えている

 アーツ しょうがないと思います。昔、K―1が大きい時はみんながK―1をやりたかった。だけど今(世界的な)マーケットはボクシングにあるわけだから、そこを選ぶしかないんです。

 ――ボクシングのエキシビションマッチに挑戦する選手も増えた

 アーツ それも、そこにお金があるからやるわけです。ボクシングやUFCはお金を儲けられるが、キックは下火になってしまっているから仕方ない。だから、そこを私が変えたいんです。私のコネクションで日本のキックボクシングを大きくして、ボクシングに行かなくてもいいように…。エキシビション戦に出る気持ちは理解できるけど、やらなくていいキック界をつくりたいです。

 ――注目のエキシビション戦、朝倉未来VSメイウェザーをどう見るか

 アーツ メイウェザーがグッドすぎる。すごすぎる。メイウェザーのゲームになるでしょう。自分の土俵だから強いですよ。これが朝倉の土俵(総合格闘技)ならわからないけど…。

 ――それでも、未来が爪痕を残すには…

 アーツ うーん…。難しいですね。メイウェザーにお金を払ったらどうでしょう(笑い)。