【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】野球ファンに強烈な印象を残した人物。ロッテ、ヤンキース、阪神などで活躍した伊良部秀輝さん(享年42)が亡くなり、7月27日で11年が経過した。日米通算106勝、27セーブの剛腕。その素顔を現役当時、異国でチームメートだった根鈴雄次氏に語ってもらった。

 オリックスの「ラオウ」こと杉本を覚醒させた男として、本紙でも打撃理論を展開した同氏は伊良部さんとエクスポズ傘下3Aオタワで一緒にプレー。短期間だが強烈なインパクトを残したエピソードを記憶にとどめていた。 

「僕は欧米人があれだけビビってしまう日本人って、今までで伊良部さんしか見たことがないですね」

 当時、右ヒザを痛めていた伊良部さん。1999年オフにヤンキースからエクスポズへのトレードが決まり、当時のチーム最高年俸選手となった。ただ、キャンプからヒザの不調を訴えマイナー調整。3Aでの実戦登板を挟んでメジャー合流というプランが立てられた。

 さあ、そうなると3Aオタワの面々は大騒ぎだ。チーム唯一の日本人選手であった根鈴氏は、監督やスタッフに質問攻めにあった。「伊良部ってどんなヤツなんだ?」と。

「いや別に恐竜でも怪獣でもモンスターでもないから。普通にしていれば普通の人だよ」と説明したが「本当なのか?」と周囲はビビりまくり。ヤンキースでは「悪童」「ヒール」役を演じていた側面もあり、相当に警戒されていたようだ。

 そして、伊良部さんがチーム合流となったときクラブハウスのルールが変わった。「事前にヘビースモーカーだという情報が入って、何と伊良部さん専用の喫煙室が作られたんですよ」。日本以上にアスリートの喫煙が敬遠される雰囲気の中、カナダで“快挙”が起こっていたのだ。

 伊良部さんと根鈴氏が一緒に3Aに在籍していたのは10試合ほど。その間の根鈴氏の打撃が好調で「伊良部さんから『日本に来たら3割打てるよ』と言っていただいたり、いろいろとお話をさせてもらいました」と回想する。

「優しすぎて、優しさが1周回って、自分を守るために怖く見せている印象。まさにそんな感じです」

 太く短く生きた希代の剛腕。MLB関係者もビビらせた裏話を添え、故人をしのびたいと思う。

 ☆ようじ・ひでき 1973年生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、ヤクルト、西武、近鉄、阪神、オリックスと番記者を歴任。2013年からフリー。著書は「阪神タイガースのすべらない話」(フォレスト出版)。21年4月にユーチューブ「楊枝秀基のYO―チャンネル!」を開設。