エンゼルスの大谷翔平投手(27)は26日(日本時間27日)の本拠地アナハイムでのマリナーズ戦に「3番・DH」で先発出場し、2打数無安打、2四球だった。前夜放った118マイル(約190キロ)の自己最速弾の再現はならず、連続試合安打は5でストップ。2回に死球をきっかけに両軍入り乱れての大乱闘が勃発。壮絶な殴り合いの末、8人が退場となった。大谷もマリナーズ関係者を背後から羽交い締めにするなど大立ち回りに参加した。異様な雰囲気の試合だったが、エンゼルスは逆転勝ちして同一カード3連敗を阻止した。

 前代未聞の大乱闘のゴングが鳴ったのは2回だった。エンゼルスの先発ワンツがマリナーズの4番ウィンカーへ投じた初球、91・1マイル(約147キロ)の直球が腰を直撃。ウィンカーは激高した。初回一死、ワンツが2番ロドリゲスへ投じた初球が頭部付近を襲い、警告試合となっていたのだ。

 伏線は前日の試合の9回にあった。マリナーズの5番手の右腕スワンソンがトラウトに投じた2球目が頭部付近を通過。この打席前までマリナーズ戦は打率3割3分3厘、6本塁打、11打点と打ちまくっていたトラウトは狙われたと怒りの表情を見せた。結局、申告敬遠で歩かせたが、火種として残った。

 怒りの収まらないウィンカーは三塁側のエンゼルスベンチへ突撃。レンドンが左手で押すと両軍が入り乱れての大乱闘に発展した。プロレスの場外乱闘さながらの殴り合いが展開され、一人が倒れると相次いで倒れて“山”ができた。両軍のブルペンからも救援陣が参戦。さらに混乱した。

 大谷もこんな大乱闘は初めて。輪の後ろに立つのではなく、暴れているマリナーズの関係者を背後から羽交い締めにして何とかなだめた。その後も大谷は前がかり状態だったが、水原通訳が体を張って必死に守っていた。

 乱闘は約1分後に一端、収束したかに見えたが、ウィンカーはネビン監督代行に詰め寄り猛抗議。再び突き飛ばし合うなど激突した。この時は相手チームの選手を抑える動きも見られた。数分続き、試合は約17分間中断した。

 結局、エンゼルスはネビン監督代行、ワンツ、守護神イグレシアス、中継ぎのテペラ、マリナーズはサービス監督、ウィンカー、ロドリゲス、クロフォードが退場処分になった。怒りの収まらないイグレシアスはヒマワリの種とピーナツが入った箱をグラウンドに投げ込み、さらにガムが入ったバケツもぶん投げて大暴れした。

 主力が狙われたらやり返すのメジャーでは“暗黙の了解”だが、ここまでの大乱闘は珍しい。試合を実況していた「バリー・スポーツ・ウエスト」のパトリック・オニール氏は「こんなすごい乱闘を見たのは初めてかもしれない。まさか、ヒマワリの種も自分があそこまで飛ぶとは想像もしていないだろう」と伝えた。
 大谷は2打席連続四球で迎えた0―0の5回一死一、二塁で相手先発の左腕ゴンザレスの初球、内角低めのシンカーをフルスイング。106・9マイル(約172キロ)の弾丸ライナーに大歓声が上がったが、ラインドライブがかかり右直に倒れた。

 1―1の7回一死一、二塁は2番手の右腕ムニョスと対戦。初球、外角高めのスライダーを強打するも浅い左飛だった。コースは甘く完全な打ち損じだった。2打席連続でトラウトが申告敬遠されており、悔しさが残った。連続試合安打は5で止まった。続くマキノンが中前に適時打を放ち、勝ち越した。荒れた試合を落としての3連敗は大ダメージになっただけにチームにとっても大谷にとっても価値ある1勝だ。