【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】「それはあまりに近すぎて、現実味がなかった」
タイラー・ウェイドがエンゼルスに移籍した際の率直な感想だった。
彼が生まれ育った南カリフォルニアのムリエッタという街は、エンゼル・スタジアムから南東に車で約1時間強。幼いころにタイラーの両親がよく連れて行ってくれた球場で、プロ野球選手になる夢を育んだ球団だが「地元だけど、エンゼルスの一員としてプレーすることは想像したこともなかったんだ。自分にはできすぎた話だって。でも気づいたのは、いつだってそれが夢だったんだよね」。
そう言ってタイラーは、通っていたムリエッタ小学校での思い出を話してくれた。
「5年生の時の担任の先生、ミスター・ザヴォッドネックが、とにかくエンゼルスの大ファンで、クラス中に(球団キャラクターの)ラリーモンキーのぬいぐるみを置いたり(往年の)ティム・サーモンのユニホームを飾ったり、着る物とか、とにかくすべてがエンゼルスってタイプの人だった。学校に野球フィールドがあったから休み時間にいつも打撃練習をしていたんだけど、先生も時々来ては練習に参加していた。僕は物心ついた時から、大リーガーになりたかったけど、5年生の『キャリア・デー』で初めて『野球選手になるんだ』って言ったら、ミスター・ザヴォッドネックが信じてくれたんだ。すごく普通に、信じてくれた。だから僕は野球選手になること以外、考えたことがないんだ。ノープランB。先生には今でも感謝していて、大リーグに上がれた時、小学校にあいさつに行ったよ。まだ先生しているんじゃないかな?」
ネットで検索したら、赤のバンダナを額に巻き、野球選手が太陽光のまぶしさを抑えるために目の下にする黒のアイブラックをつけて満面の笑みを携えたザヴォッドネック先生の写真が、ムリエッタ小学校5年生の担任教師のリストにあった。
タイラーが大リーガーになったことをきっとすごく喜んだだろうが、その教え子を自分の好きな球団の一員として見られるのは、とても感慨深いものではないだろうか。
「ヤンキース時代とは違う新しいエンゼルスでの役割。家族や友人がいる地元でプレーしているんだなって、僕自身、最近ようやく実感し始めたところだよ」
これは、タイラーが出演していたポッドキャストを聞いて最近知ったことだが、日々、その日の目標などを日記につけているらしい。ドラフト直後、初めて行ったマイナーリーグのホテルの池でその日の食材を釣るラテン系選手たちを見てカルチャーショックを受けたという話は、個人的に改めて聞いてみたいエピソードだった。
でも、一番聞きたかったのは、最近話題になった「イケメン」と呼ばれることについて。
タイラーは単語を聞くなり、少し意味深に、照れたような笑いを浮かべ「ショーヘイが、ジョークで僕をいじめたい時にそう呼ぶだけで、いつもではないよ! 普段、皆には『T―ウェイド』って呼ばれることの方が多い」と謙虚なコメントを残してその場を後にしたが、あの表情は、どこかまんざらでもなさそうだった。
☆タイラー・ウェイド 1994年11月23日生まれ。27歳。米国・カリフォルニア州出身。185センチ、83キロ。右投げ左打ちの内野手。2013年のMLBドラフト4巡目(全体134位)でヤンキースから指名されプロ入り。17年にメジャーデビュー。主に二遊間、外野も守れる俊足のユーティリティーとしてチームを支え、21年には103試合に出場し、打率2割6分8厘。同年オフにエンゼルスに移籍した。今季、同僚の大谷から「イケメン」と呼ばれていることが米国内で話題となった。












