スコア以上に盤石の戦いだった。第104回全国高校野球選手権大会(16日、甲子園)第11日第4試合は、大阪桐蔭(大阪)が二松学舎大付(東東京)を4―0で下して4年ぶりのベスト8進出。史上初となる3度目の「春夏連覇」にまた一歩前進した。

 王者らしく泰然自若だった。「先発が(相手エースの)辻君だと思って準備していたので、大矢君とは思わずビックリした」。試合後の会見で開口一番、西谷監督は相手先発の読み違えを告白。「(昨日の)夜のミーティングでコーチ陣が他の投手の映像も探してくれていて、少しその映像を見ていたので、動揺することなくゲームに入れたと思う」と語り、ナインの心理にさほど影響はなかったという。左腕の予想がふたを開ければ右腕が先発。対応は簡単ではなかったはずだ。

 驚きはあっても、心理的にマイナスの影響が少なかったというのは強がりではなかった。初回の攻撃、まずは先頭の伊藤が積極的な走塁で二塁打にしてチャンスメーク。切り込み隊長が勢いをつけると、一死一、三塁から丸山と海老根の連続適時打で2点を先取。先手を取って優位に進める王道の展開に持ち込んだ。2回には松尾の犠飛で加点。4回は相手暴投でリードを広げた。

 中盤以降は追加点こそ奪えなかったが、先発の川原が力強い真っすぐを軸に緩急を駆使して得点を与えなかった。名門のエースナンバーを背負う右腕は6安打8奪三振で完封。要所で三振を奪い、守備のリズムを意識して打たせて取る巧みな投球だった。

 さらにこの試合、大阪桐蔭の強さを強調したのが遊撃でスタメン出場した背番号13の大前圭右(3年)。俊足で内外野の守りをそつなくこなす「ウチではスーパーサブ的な感じ」(西谷監督)という〝ジョーカー役〟が抜擢に応える存在感を発揮した。6回の守備で、三塁手の伊藤が相手先頭・片井が放った三遊間の強烈な打球を弾くも大前が見事にカバー。ノーステップから見事な送球でアウトにしたプレーは、追加点が奪えない中で相手に流れを渡さない光るプレーだった。

 西谷監督は大前の起用について「練習やこの大会の途中から出た大前の動きを見て非常に勢いがあったので、大前を一度試してみたかった。また新しい血を入れて、チームに何か新しい化学反応が起こるかなという気持ちもあった。いつも後半に試合に出るが、ベンチでいい準備をしてくれているので、今日は大前の勢いを買ってスタメンにした」と説明。背番号6の鈴木をベンチに追いやった形の大前の好プレーに「待ってましたという感じだったと思う。勢いを与えてくれた」と賛辞を送り、チーム内競争を活性化する働きに目を細めた。

 頂点を狙う中で、初戦は硬さもあって苦しみながらの勝利で、2回戦は攻撃陣が奮起して25安打19得点と大勝した。2試合連続零封勝ちとなった3回戦は選手層の厚さを改めて証明。昨秋の明治神宮大会、今春の選抜大会に続く〝3冠〟を狙う王者に死角はない。