第93回選抜高校野球大会(3月19日から13日間・甲子園)の組み合わせ抽選会が23日、オンラインで開催され、第3日第2試合で昨秋の九州大会決勝と同一カード、福岡大大濠(福岡)―大崎(長崎)が聖地で再戦することになった。

 決勝で敗れた福岡大大濠にとって待ち望んだ因縁の相手。「フリー抽選と聞いていたので(九州勢同士の対戦も)あり得ると思っていた」と言う八木監督も、いざ甲子園での大崎戦が決まると興奮を隠せない様子だった。

 大会注目左腕のエース・毛利海大投手(2年)は開口一番「まさか…でした」と偽らざる胸中を吐露。昨秋の九州大会で先発を回避した決勝で敗れた因縁の相手だ。「投げていませんが、チームとして唯一の負けだった。リベンジの舞台になる」。そうナインの思いを代弁すると、エースは拳を握りしめた。

 昨秋の九州大会、1回戦の大分商戦は1失点完投。続く準々決勝・具志川商戦は完封で、センバツ出場目安の4強にチームを導いた。

 この冬はトーナメントを投げ抜くスタミナ強化と持ち味であるボールの「切れ」と「伸び」を磨いてきた。ソフトバンク・和田をほうふつとさせ、すでにプロスカウトの熱視線を浴びる最速140キロ左腕。当然のごとく九州対決でのリベンジ成功は「通過点」と思っている。

 人一倍、今回の甲子園にかける思いは強い。毛利は「高校球児にとって夢であり、一番の目標」と言い切る。それは、甲子園が真剣勝負の中で実力を測る最適な舞台と考えているからだ。

 去年、球児から〝本気の甲子園〟を新型コロナが奪った。昨春は中止、昨夏は各校1試合限りの交流大会。プロアマ問わず球界関係者からは「球児の真の評価が下しにくい」という声が漏れた。球児の間からも〝思い出づくりの延長〟としての甲子園に違和感を抱く者もいた。

 今回は実に2019年夏以来のガチンコ甲子園だ。「真剣勝負」に飢えた球児がいることは事実で、毛利もまたその一人だ。プロや強豪大学、社会人で野球を続ける意思のある選手にとって甲子園は最大の見本市。毛利も九州対決の先に、真の目的を明確に持っている。

「(強豪の)大阪桐蔭だったり、好投手を擁するチームとやって、そこで勝ったら印象が上がってくると思う。好投手がいるチームと戦って勝てる投球がしたい」

 今大会もプロ注目投手がズラリと揃う。実力を証明するには全国区の投手や強豪校を相手に、センセーショナルな投球でお株を奪うのが手っ取り早い。

 近年だけでも阪神・浜地や今年オリックスにドラフト1位入団した山下、今秋ドラフト上位候補の法政大・三浦ら才能ある投手を輩出し続けている福岡大大濠。伝統ある背番号1を引き継ぐ新エースは、意欲満々に聖地での猛アピールを誓う。

 待ちに待った球児たちの真剣勝負の場。甲子園に新たなスター誕生の予感がする――。