【元局アナ青池奈津子のメジャー通信】10月の戦いは残っているが、レギュラーシーズンの終わりは一つの節目。自然と今季出会った選手やインタビューを振り返るうち「You're so pretty!(お前はとてもプリティー!)」が浮かび、思わず笑みが漏れた。ペイトン・トーリがグラブに刻むお守りのような母ジーナさんの言葉だ。
口ひげによる貫禄、体格の良さ、中西部のなまりを含んだ話し方。醸し出す雰囲気から「いかにもオクラホマ州出身が似合う」ペイトンにそれを伝えると「実はよく言われるんだ。自分でもそれを誇りに思ってるよ」と笑った。
「オクラホマの男は、大きい男が多いね。僕らはしっかり食べて育っていて、食事は抜かないから大きめになる傾向がある。でも、働き者が多いよ。働くのが好きで、みんな一生懸命。オクラホマには『(州名の頭文字2文字を取って)We’re OK(僕らはまあまあ)』というジョークがある。何かがものすごく飛び抜けているわけじゃないけど、きちんと仕事はやり遂げる、そんな特徴。あと、ひげを生やしている人も多い」
南側にあるテキサスと同じにされる傾向があるため、オクラホマには「僕らは僕らだ」とちょっとしたライバル意識があるらしい。カウボーイ、カントリーや農場などのイメージも間違いではないが、ペイトン自身は街中で育ったため、ハンティングよりはゴルフの方が性に合っている。
ボストンの番記者に太鼓判を押されて話しかけた相手だったが、ペイトンが持つ相手に元気や安心感を与えるエネルギーを感じるのに、時間はかからなかった。「人が大好き」という彼は言葉をつなぐのもうまく、昨年デビューした若手とは思えない落ち着きも人としての魅力を際立たせる。本当に23歳だろうか?
「それもよく言われるんだ! 体の大きさは父譲りだけど、僕の性格の多くは、母から来ていると思う。母はすごく楽しい人で、とてもおおらか。そして、すごく謙虚だけど、自分に自信と誇りを持っている人」
そして「暗い話にするつもりはないんだけどね」と前置きし、2016年にステージ4の大腸がんで余命3か月と診断されたジーナさんが、8年間の闘病の末、24年に亡くなったことを教えてくれた。
「抗がん剤治療を受けながらも、母は必ず試合に来てくれた。僕や弟を恥ずかしがらせるようなこともたくさんしたけど、それも今では最高の思い出。チームメートはみんな母のことを『ママ』と呼んでさ。チームや学校にもとても深く関わり、僕らを誇りに思ってくれていた」
母が余命を宣告された時、ペイトンはまだ中学生だった。
「僕が出るすべてのスポーツイベントで、母は必ず『You're so pretty!』って何度も叫ぶんだ。もう最初は本当に恥ずかしくて。でも、そのうちそれが聞こえると『ヘーイ、母さん!』って返せるようになった。母との一番好きな思い出なんだ」
「お母さんはどんな人?」という問いに「アハッ」と吹き出したペイトン。何とも愛情がにじむ、こちらまでつられて笑ってしまう、くすぐったい笑いだ。
「人生で出会った最も愛情深い人。それにとても正直で、いつも本音で生きていた人。僕らが大好きなことをやるのを見るのが大好きで、野球の話も女の子との悩みも聞いてもらっていた。僕はそんな母を受け継いでいきたいんだ」
私はその日、ペイトンだけではなく、ジーナさんにも出会えた気がした。ポストシーズンの大舞台でもペイトンに向かって「You're so pretty!」と叫ぶジーナさんの声がきっと聞こえる。
☆ペイトン・トーリ 2002年11月1日生まれ、オクラホマ州出身。大学時代に二刀流から投手に専念。24年のMLBドラフト2巡目(全体50位)でレッドソックスから指名されて入団。25年に1A、2A、3Aと駆け上がり、8月にメジャーデビュー。今季は26試合に先発して9勝6敗、防御率3・03。198センチ、113キロ。













