そのキャラクター、本当に必要ですか? 商品やサービスに親しみやすさを持たせるためキャラクターに注力する企業が増えている。だが、流通ウォッチャーの渡辺広明氏が企業キャラの歴史をひもとくと、ヒットするのはごく少数であることが明らかに…。成功の条件は、カワイイだけじゃダメなんです!
日本経済新聞社が「NIKKEI企業キャラクター総選挙2026」(9月17日まで)なる広告企画を実施している。
近年、企業キャラクターはマスコットを超え、企業の「広報担当者」として重要な役割を担っており、企業と社会をつなぐ架け橋になっているという。
昨年行われた第1回の総選挙には27社がエントリーし、初代王者に「ミドすけ」(三井住友銀行)、2位「ぽすくま」(日本郵便)、3位「ガリガリ君」(赤城乳業)が輝いた。今年は2倍となる54社が参加しているが、立候補した面々が“初めて見る”キャラばかりで逆に驚かされる。渡辺広明氏も「正直、知っていたのは10キャラもいないですね…」と苦笑する。
「一口に企業キャラといっても、“出自”によって性格は異なります。歴史をひもとけば、古くはキユーピーマヨネーズ、不二家のペコちゃん、ヤンマーのヤン坊マー坊など商品名と企業名が結びついているものが多い。今年のエントリーで言えば、『コアラのマーチくん』(ロッテ)、『ビオレママ』(花王)などがこのタイプ。スーパーやドラッグストアなどで目にする機会が多いので記憶に残りやすいのです」
いわば“商品の顔”というわけだが、“見えないサービスの顔”として成功したのが、来年3月に卒業が決まっている「Suicaのペンギン」(JR東日本)だという。
「2001年にデビューして四半世紀もの間、愛されたのは大成功と言っていい。食品や日用品と違って商品そのものがイメージしづらいサービスをこれほどまで想起させたキャラは他にいないのでは」(渡辺氏)
渡辺氏はローソン勤務時代、ロイヤリティマーケティングの共通ポイントプログラム「Ponta」(2010年にサービス開始)に懐疑的な見方をしていたと反省する。
「バイヤーとしてハローキティ、マイメロディ、ポケモンなど名だたるキャラクター商品に携わっていて、こうした“勝ち確”(=勝ちが確定)なキャラと比較した際に(Pontaの)タヌキは失敗するんじゃないかと思っていたんです。ところがPontaの場合、提携店ごとに制服や姿を変える“変身”でキャラを共有できる仕組みとして設計されており、その後の『お買いものパンダ』(楽天)、『ポインコ兄弟』(NTTドコモ)の先駆けとなりました。ゆるキャラが流行した2010年代の着ぐるみブームと重なったことも大きいでしょうね」
だが、光あるところに影あり。日の目を浴びることなく消えていった企業キャラも膨大にあるのが現実だ。企業キャラが成功する条件はどんなものなのか?
「おいしいラーメンを出せば売れると思いがちですが、実際にラーメン店の利益は立地、回転率、原価率など複数の要因によって左右されます。基本的に同じ品揃えのコンビニなんかもそうですよね。この意味でいうと企業キャラがカワイイだけじゃダメなんです。どのように展開して消費者との接点をいかに設定するか。これをどこまで徹底できるかがカギですし、サンリオのようなキャラクターを生み出す企業でも新キャラがヒットする確率は10%もありません」
企業キャラをヒットさせるのは修羅の道。特にBtoB企業にとっては、認知度という高いハードルが待ち構えている。視点を整理すると、おのずと今年の企業キャラ総選挙の優勝候補が見えてくる。
ひとつは今年3月にマルハニチロから社名変更したウミオスだ。気候変動によって突然変異で生まれた謎の生命体。新社名を浸透させる大役を担うが高橋一生と共演したテレビCMも話題になった。社名変更をキャラクターで浸透させるという明確な役割を持ち、まさに社運がかかった存在といえる。
もうひとつはファミリーマートの「ファミペイ」公式キャラクターのファミッペだ。こちらは2019年のファミペイローンチ時に登場。レジ袋やお手拭きにさりげなく存在するが、コアなファンを抱えており、オンラインショップでは期間限定のぬいぐるみが6000体も売れた実績を持つ。日常生活の中で接点を積み上げられるのも強みだ。
「カワイイだけじゃなくSNSを通じた親しみやすさも求められる時代。東スポはJR東海のTOKAI STATION POINT公式キャラのとすっぱとコラボしたらいいのでは? 買い物袋を頭に乗せているカッパなので早めに発見してあげてください!(笑い)」(渡辺氏)
JR東海のサービスを利用していない人に向けてなら「カッパ発見!」が通じるかもしれない――。
☆ わたなべ・ひろあき 1967年生まれ。静岡県浜松市出身。「やらまいかマーケティング」代表取締役社長。大学卒業後、ローソンに22年間勤務。店長を経て、コンビニバイヤーとしてさまざまな商品カテゴリーを担当し、約760品の商品開発にも携わる。フジテレビ「Live News α」コメンテーター。Tokyofm「ビジトピ」パーソナリティー。
















