中国の習近平国家主席と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記が8日に平壌で会談したのに続き、9日には昼食会を開いた。2人は、新時代の中朝関係の発展について重要な共通認識に達したほか、地域情勢について意見交換を行ったという。今回、訪朝した中国の思惑をひもとくと――。

 7年ぶりの訪朝となる習氏は、1泊2日にわたる国賓訪問の日程を終えた。

 韓国、米国などのシンクタンクは、2022年のウクライナ戦争以降、北朝鮮とロシアが急接近したと指摘。今回の習氏の訪朝は、北朝鮮がロシア一辺倒になるのを防ぎ、中国の影響力を再確認することが重要な目的の一つだった可能性が高いと分析している。

 実際、2023年に金氏はロシアの極東を訪問し、24年にプーチン大統領は平壌を訪問。「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。ウクライナ戦争においては、北朝鮮による砲弾・ミサイル、さらには兵士をロシアに供与している疑惑がある。その見返りに北朝鮮は、ロシアから軍事技術を提供されているとみられる。北朝鮮はかつてないほどロシアとの関係を深めている。

 中国にとっては、北朝鮮は友好国というだけでなく、米国と同盟を結んでいる韓国との緩衝地帯として重要だ。今回、習氏は「北朝鮮と金正恩総書記に対する中国の支持は揺るぎない」と明言し、北朝鮮がどんなにロシアとの関係を深めても、〝最終的な後ろ盾は中国だ〟とクギを刺したといわれる。

 中国事情通は「今回の習氏の訪朝は、東アジア事情が大きく変化する中で中国が新たな戦略を示したと思われます。これまで〝台湾有事〟といえば、中国軍が台湾を侵攻するシナリオが主流でした。しかし、今現在、中国は、台湾の東側海域を重要視しなければならなくなりました。先月末、日本とフィリピンが首脳会談を行い、今後の包括的・戦略的パートナーとしての共同声明を発出したからです」と指摘する。

 日本とフィリピンは、情報共有協定の交渉開始、安全保障協力の強化、海洋境界画定協議の開始を進めることになる。

「中国側から見ると、米国、日本、フィリピン、台湾という海洋安全保障ネットワークが形成されつつあることになります。そのネットワークが形成されると、中国が自国領とみなす海域が台湾側に帰属する可能性があります」(同)

 過去の中国と北朝鮮の会談では常に「朝鮮半島の非核化」問題が取り上げられてきたが、今回は非核化には触れなかった。

 同事情通は「中国としては、北朝鮮の核保有を現実として受け入れつつ、戦略的連携強化を呼びかけ、結束の重要性を強調しました。台湾有事に北朝鮮を引き込む予兆かもしれません」と話す。

 東アジア情勢も少しずつ緊迫の度を深めているようだ。