【多事蹴論106】2006年ドイツW杯惨敗は“神様”の不調が原因だった――。02年日韓W杯で初のベスト16入りを果たした日本代表は“サッカーの神様”こと元ブラジル代表MFジーコ氏を指揮官に招聘し、苦しみながらもW杯アジア予選を突破。絶対エースのMF中田英寿、MF中村俊輔、MF小野伸二、MF稲本潤一の「黄金の中盤」を中心に「史上最強チーム」として期待がかかっていた。
W杯本番を前に開催国ドイツ、マルタと強化試合を実施し最終調整。いよいよ1次リーグ初戦のオーストラリア戦に挑むだけとなった。そんな中、チームスタッフは本紙の取材に対して、ジーコ監督に異変が生じていることを明かした。
指揮官を含め、実兄エドゥー・テクニカルディレクター(TD)ら代表チームスタッフは日ごろから「ポリンツィ」(ポルトガル語でつまようじの意味)という、つまようじを使ったゲームでコミュニケーションを深めていた。これは数人で手の中に握ったつまようじの本数を当てるという単純なもので夕食時に行われていた。ただ、里内猛フィジカルコーチは「これは監督にとってのトレーニングです。相手の心理を読むことで洞察力を養えるし、観察力も鍛えられる。常に相手の手の内を探ることで状況判断能力も高まり、監督の勝負勘も磨かれる」と説明していた。
いつもジーコ監督が勝利していたそうだが、W杯本番に向けて、ドイツ入りしてからはまさかの連戦連敗。このゲームは敗者が他のメンバーのためにお茶を運んでくるという“罰ゲーム”があり、連日連夜、ジーコ監督が他のスタッフのためにお茶を運んでいた。指揮官は大の負けず嫌いとあって、何度もゲームに挑んだため、テーブルの上はお茶の入ったコップだらけになることも珍しくなかった。しかも、さらなるペナルティーで、その日にもっとも負けた人がトロフィーを自室に持ち帰ることになっており、ジーコ監督は毎晩“敗者の証し”を抱えていたという。
このジーコ監督の異変をスタッフたちも感じ取っていたという。しかもチーム練習後にスタッフらが行うミニサッカーも常に勝利を収めていた代表指揮官が連戦連敗。W杯を目前に控えて「監督の勝負勘が狂っているのではないか」とささやかれていたという。
大会前、開催国ドイツとの強化試合でも、リードを奪いながらもFWを投入。結果的に追い付かれ、金星を逃したこともあってスタッフらは初戦オーストラリア戦に向けて“危険な兆候”と捉えていた。
監督して臨む初のW杯とあって見えない重圧が原因とみられていた。そして迎えた1次リーグ初戦で日本はオーストラリアに敗戦。1―3の逆転負けとあって采配ミスも指摘されていたが、ジーコ監督の“脳力”は最後まで回復することはなく日本は歴史的な惨敗を喫した。 (敬称略)












