大相撲春場所では関脇霧島(29=音羽山)が優勝を果たして大関復帰を確実にする一方で、横綱が存在感を示すことができなかった。横綱として賜杯を抱いていない豊昇龍(26=立浪)は、またしてもV逸。大の里(25=二所ノ関)は左肩痛で序盤に戦線離脱した。そうした中、両力士による〝金星大量配給問題〟が改めて浮き彫りに…。先輩横綱が苦言を呈した。

 春場所千秋楽翌日の23日、横綱審議委員会(横審)の定例会合が東京・両国国技館で開かれた。話題の中心は、V逸に終わった東西の両横綱だ。豊昇龍は12日目に1差で首位を走る霧島に完敗。14日目には霧島が負けた直後に自らも敗れ、賜杯を譲り渡す格好となった。大の里に至っては、初日から3連敗。4日目から左肩痛を理由に途中休場した。

 横審の大島理森委員長(元衆議院議長)は会合後に会見を開き、大の里に「ともかく体をしっかり治して、次の場所を目指してほしい」と回復に専念することを提言。自ら星を落として横綱初優勝のチャンスを逃した豊昇龍については「(横審委員から)そういう指摘があり、さらに横綱としての強さを磨いてほしいという意見があった」と一層の奮起を求めた。

 優勝が義務付けられている横綱のV逸は、これで3場所連続。その主な要因として指摘されているのが、格下への取りこぼしの多さだ。豊昇龍は春場所中日までに2個の金星を与え、横綱在位7場所で合計15個を配給。大の里も休場するまでの3日間で2つ与え、横綱5場所目で11個目となった。2人とも1場所平均で2個を突破。過去の横綱と比較しても数字は突出している。

元横綱大乃国の芝田山親方
元横綱大乃国の芝田山親方

 元横綱大乃国の芝田山親方(63)は春場所中、次のように指摘していた。「今は下から当たる力士(平幕)の中で、横綱や大関に怖さを感じている力士が誰もいない。昔は挑戦する立場の力士は〝かなわない、とにかく真正面から当たっていこう〟という思いだった。今は番付に関係なく『勝てるかもしれない』という気持ちを持たせてしまっている」

 土俵の頂点に君臨する横綱が絶対的な強さを失ったことで、平幕力士は「金星獲得の大チャンス」とばかりに最高潮のモチベーションで勝負に挑んでくる。体力や技術以上に精神面が大きな比重を占める大相撲の勝負において、その優位性は完全に失われているのが現状だ。果たして横綱は、かつての権威を取り戻すことができるのか。番付社会は大きな岐路にさしかかっている。