首の皮一枚つながったのか、どうか――。トランプ米大統領は23日、イランの発電所やエネルギーインフラへの攻撃を5日間延期すると自身のSNSで発表した。これは両国が協議した結果とつづったが、イラン側は一部報道で協議自体を否定しており、情報が錯綜している。世界の海上原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡を巡って、最悪の事態も懸念されており、依然として予断を許さない状況が続いている。

 トランプ大統領がイランに対し、「48時間以内にホルムズ海峡を開放しなければ、多数の発電所を攻撃する」と通告したのは日本時間22日午前8時45分のこと。そのタイムリミットは24日午前8時44分だった。これにイランは、米国がイランの発電所を攻撃すれば「ホルムズ海峡を完全封鎖する」と反発していた。

 すると、トランプ氏は23日の午後8時過ぎに自身のSNSに「米国とイランが完全かつ全面的な解決に向けて、2日間にわたって非常に良好で生産的な協議を行った」と報告。その上で「私は国防省に対し、イランの発電所およびエネルギーインフラに対するあらゆる軍事攻撃を5日間延期するように指示した」と表明した。

 これで世界はひと息つける…と思いきや、イランメディアは関係者の話として「イランはトランプ大統領と直接的にも間接的にも協議していない」と否定。さらに「トランプ氏の投稿はエネルギー価格を下げ、軍事計画を実行するための時間稼ぎ」と指摘した。

 米国事情通は「米イスラエルがイラン戦争を始めたことで、世界の石油の20%が通過するホルムズ海峡がイランに事実上封鎖されている。これによって世界の原油価格が上昇しており、米国は世界に経済的混乱を巻き起こしたとして猛批判を浴びています。そのため、イランに開放を強く警告したのですが、イランはまったく譲歩するつもりがない。今回の双方の主張がどこまで事実かはわかりませんが、いずれにしても緊迫している状況に変わりはありません」と語る。

 イランメディアが報じているように、5日間の延期が軍事計画を実行するための時間稼ぎで、実際に米国が「発電所」などのインフラを攻撃することになると、ますます泥沼化していくのは間違いない。

 中東の衛星テレビ・アルジャジーラによると、イランには約110の発電所が存在するが、米国が狙うのは巨大発電所とみられ、最大級のダマーヴァンド発電所や、国内唯一の稼働原発のブーシェフル原子力発電所など、6か所ほどに絞られるという。

 一方、イランのイスラム革命防衛隊は、インフラ攻撃には「同等の報復」で応じると警告している。その中でも最悪なのは海水淡水化プラントへの攻撃だ。

 軍事事情通は「ホルムズ海峡封鎖は続行するとして、さらに湾岸諸国の海水淡水化プラントへの攻撃も加われば、未曽有の人道危機になります。湾岸諸国は、地下水や河川資源が乏しく、サウジアラビア、UAE、カタールなどでは、飲料水の大半を淡水化プラントに依存しています。水不足どころか、国民の飲料水危機となるのです。おそらく各国の水の備蓄は1週間程度とみられています。石油は経済への影響ですが、水は人間の生き死にに関わります」と指摘する。

 イランが淡水化プラントへの攻撃を撤回したという一部報道もあるが、まだ確定したものではないという。そのため万一、淡水化プラントが標的となれば、戦火が拡大するのは必至。イラン戦争はいったいどうなってしまうのか。