トランプ米大統領は21日(日本時間22日)、ホルムズ海峡を事実上封鎖しているイランに対し、「48時間以内に完全解除」を通告した。前日にはイランのアッバス・アラグチ外相が日本関連船舶の通過を認める用意があると発言し、日本国内では〝アラグチルート〟に活路を見いだすべきとの声もあるが、トランプ政権側からはとんでもないあだ名をつけられていた。

 トランプ氏はSNSに「48時間以内にホルムズ海峡を完全に開放しなければ、イランのさまざまな発電所を攻撃し、破壊する」と投稿した。原油価格が高騰する中、トランプ氏は一時、日本に対し、艦船派遣を要求するなどホルムズ海峡の自由化に躍起になっているが、シビレを切らして強硬手段に出たといえる。

 この間、アラグチ氏の発言も注目された。20日に共同通信のインタビューで「海峡は封鎖していない。イランを攻撃する敵の船舶に対しては封鎖している」と述べ、通過を希望する国とは直接協議で許可する姿勢を見せた。

 アラグチ氏は親日家で知られ、2008~11年までは駐日大使を務めていた。東日本大震災では被災地で炊き出し支援を行うなどして、3年前には旭日重光章を受章。日本駐在時の回顧録「イランと日本」(論創社)を出版している。名前が日本語に似た響きだったことで「新久地(あらぐち)」の当て字の名刺をつくっていたという。

 実際、日本の政治家とのパイプは太く、茂木敏充外相は22日、「日曜報道 THE PRIME」(フジテレビ系)で「アラグチ外相とは旧知の仲」「昔からよく知っている」と明かし、電話会談では「ホルムズ海峡封鎖を止めるべき。このままではイランは孤立する」と伝えたというが、日本側が個別に海峡通過の許可を得る交渉に乗り出すことは否定した。

 これに参政党の神谷宗幣代表はXに「そんなことを言っている余裕は日本にはないです。私は予算委員会でも個別交渉の要望をしましたよ 早く原油を入れてこないと日本の生活物資が足らなくなり、企業は倒産し、国民生活が混乱します」と怒りをにじませた。日本とイランは友好国で、アラグチ氏を窓口にホルムズ海峡問題だけでなく、事態の沈静化へ日本が仲介役になるべきとの声もあるだけに急を要すというわけだ。

 ただ、米メディアは「アラグチ氏がこれまで交渉役を担ってきたことは認めるが、実際に意思決定を行っているのが誰か分からない。アラグチ氏は〝FAX機〟だ」と、トランプ政権側は単なるメッセージの送受信役にすぎないと評していることを伝えた。当然、日本側もアラグチ氏の置かれたポジションを把握しており、茂木氏もビジネスライクな対応にとどまっているといえる。

 ハメネイ師の死去後、後を継いだモジタバ師は姿が見えず、革命防衛隊の幹部は軒並み殺害されたが、実権を握っているのはいまだ同防衛隊の上層部とみられる。トランプ政権はアラグチ氏を動かしている上層部へのルートを探っており、その意味ではキーマンといえそうだ。