最後の大舞台で、米国の主将は何も残せなかった。第6回WBC決勝で米国は17日(日本時間18日)、マイアミのローンデポ・パークでベネズエラに2―3で敗れ、2大会連続の準優勝。アーロン・ジャッジ外野手(33=ヤンキース)は4打数無安打3三振と沈黙し、優勝候補の中心として期待された役割を果たせなかった。敗戦以上に鮮明になったのは、多くのMLB関係者も口にするように「ジャッジは結局、大谷翔平(31=ドジャース)にはなれなかった」という現実だった。

 決勝の舞台で米国は8回にハーパー(フィリーズ)の2ランで追いつきながら、9回に再び勝ち越しを許して力尽きた。ベネズエラ投手陣の前にわずか3安打しか放てなかった打線の象徴が、3番に座ったジャッジだった。

 初回は見逃し三振、4回は空振り三振、6回は力のない三ゴロ、そして8回も見逃し三振。大一番で4打数無安打3三振に終わり、大ブレーキとなった。大会通算でも7試合で打率2割2分2厘、2本塁打、5打点。数字そのものも物足りないが、それ以上に問われているのは主将としてチームを押し上げるだけの「熱」と「結果」を最後まで示せなかったことだ。

 今大会のジャッジは、プレー以前に「言葉」が何度も空回りした。開幕前にロッカールーム(クラブハウス)で「最も努力するチームとして互いを頼り、すべてを懸けて戦おう」などと述べたスピーチ動画はSNSで拡散され、「鼓舞されない」「史上最悪」と酷評された。内容自体は主将としてまっとうでもファンが求めていたのは理屈ではなく、空気を変える一言だったのだろう。

 そこで必ず比較対象として持ち出されたのが、2023年大会決勝前に侍ジャパンを鼓舞した大谷の「憧れるのをやめましょう」だった。あの一言は相手への畏怖(いふ)を断ち切り、チームの視線を一つに束ねた。今回のジャッジの言葉は、その逆だった。響かず、残らず、むしろ不安だけを増幅させた。

 さらに準決勝後には、マイアミの熱狂について「ワールドシリーズよりも大きく、素晴らしい」と語り、ニューヨーク周辺で波紋を広げた。国際大会の熱量を称賛しただけとも受け取れるが、ヤンキースの主将でありながら、まだワールドシリーズ制覇を果たせていない立場でその比較を口にした意味は重い。しかも昨年のワールドシリーズでは、大谷を擁するドジャースに屈している。その雪辱を果たせていない男が、WBC優勝で一気に評価を塗り替えようとしていたのではないか――。そんな邪推が、米球界で広がるのも無理はない。結局、優勝できなかったことで、あの発言だけが宙に浮いた。

 一方で大谷は日本が準々決勝で敗退したにもかかわらず、指名打者部門で2大会連続のオールWBCチーム入り。今大会は4試合で打率4割6分2厘、3本塁打、7打点、出塁率6割1分1厘、長打率1・231、OPS1・842を記録した。日本は過去ワーストのベスト8敗退に終わったが、大谷個人はなお大会の中心にいた。勝敗を超えて存在感を残し、数字でも記憶でも大会を支配した。そこが決勝で沈み、言葉でも空回りしたジャッジとの決定的な差だった。

 主将とは、単に腕章を巻く人間ではない。重圧の最前線で結果を出し、言葉に実体を与える人間である。ジャッジは今大会、その両方を取り逃した。対する大谷は日本が準々決勝で敗退した後もなお、打撃成績と存在感で大会に確かな足跡を刻んだ。日本も米国も頂点には届かなかったが、第6回WBCは結果的に昨季ナ・リーグMVP・大谷と昨季ア・リーグMVP・ジャッジの明暗を際立たせる大会にもなった。