米国で、AI顔認識ソフトの誤作動で一度も訪れたことのない州での犯罪に関与したとして、逮捕され、半年も拘置所に拘束された女性が、アリバイが証明されて釈放された。米誌ピープルなどが14日、報じた。

 テネシー州在住のアンジェラ・リップスさん(50)は025年7月、ノースダコタ州ファーゴの警察がAI顔認識ソフトを使って銀行詐欺事件の容疑者として誤って特定した結果、米国連邦保安官のチームに逮捕され、6か月間も拘置所に収監されたという。

 警察は2025年4月から5月にかけて発生した銀行詐欺事件を捜査していた。容疑者は偽の米陸軍IDカードを使って数千ドルを引き出していたとされる。警察は監視カメラの映像をAI顔認識ソフトで分析し、容疑者を特定しようとした。その結果、AIソフトがリップスさんを候補として検出した。その後、事件を担当していたファーゴの刑事が、リップスさんのSNSアカウントや運転免許証を確認し、顔の特徴、体格、髪型などを理由に、容疑者に見えると判断したという。

 テネシー州の拘置所に4か月収監され、その後、ノースダコタ州の拘置所に移送された。12月9日に弁護士を雇い、初めてファーゴ警察の事情聴取を受けたという。

 ジェイ・グリーンウッド弁護士は警察に対し、銀行記録の提出を求めた。その記録は、犯罪が行われていた時期にリップスさんがテネシー州にいたことを示す証拠となった。

 グリーンウッド氏は「ノースダコタ州で容疑者が社会保障の小切手を銀行に入金しているのと同じ時間帯に、リップスさんがテネシー州でガソリンスタンドでタバコを買い、ピザを購入ている記録がある」と語る。

 ファーゴ警察の事情聴取から5日後、クリスマスイブに容疑が取り下げられ、リップスさんはノースダコタ州の拘置所から釈放された。

 リップスさんはメディアに対し「私はノースダコタ州に行ったことがありません。ノースダコタの人も誰も知りません。逮捕の瞬間は本当に怖かった。今でも頭の中で何度もその光景がよみがえります」と話した。

 リップスさんは当局によって何の支援も受けられず、家に帰る手段もないまま路上に放り出された。そして、収監中にほとんど全てを失ったと述べている。家族がリップスさんの私物を保管場所に預けてくれたものの、保管料を払い続けられなかったため、それらは売却されてしまった。借りていた家と車も失ってしまった。

 3月11日、クラウドファンディング「ゴーファンドミー」で、リップスさんの生活を立て直すための寄付を募る募金ページが公開され、一部始終が明かされたことで、今回の誤認逮捕が明らかになった。