【医師のお部屋】年齢を重ねた多くの男性が付き合っていくことになる前立腺肥大症。排尿障害が代表的で、生活の質が大きく下がるという。悪化するとどうなってしまうのか、そして治療法について、泌尿器科医の村山慎一郎先生に話を聞いた。

 ――前立腺肥大症が悪化するとどうなる?

 村山医師(以下、村山)肥大が進むと、尿を出したくてもうまく出せなくなります。ひどくなると全然出ないという状態にも。尿がちゃんと排出されないということは、腎臓で作られた尿が膀胱にたまり過ぎてしまい、腎臓に負担がかかり続ける。負担がかかり続けるということは、腎臓の機能が悪くなります。さらに怖いのが、腎臓の機能が低下すると、体の中にある水分や血液などの循環も悪くなるため、巡り巡って心臓の機能にまで影響するんですよ。

 ――心臓にまで! 怖いですね

 村山 ただ、過度に恐れる必要はないですよ。排尿の悩みがあれば放置したり、我慢したりしない。そして、医療機関を受診して、適切に薬を飲むということを意識して、大きな病気につながらないように対策してほしいです。

 ――どういう治療法があるのでしょうか

 村山 主に飲み薬による薬物治療で、尿を出しやすくします。尿の通り道に直接作用する薬や、前立腺を小さくする薬、前立腺周囲の血流を良くする薬などがあります。

 ――完治する病気ですか

 村山 完治させることは難しいですね。薬を飲めば、若い頃のサイズに前立腺を戻せるというわけではありません。薬とうまく付き合って生活の質を下げないようにしていくのがベストです。

 ――予防する方法はある?

 村山 肥大するのは主に男性ホルモンの働きが影響します。加齢に伴い、いわゆる性ホルモンの分泌が増減します。つまり、今までのバランスが崩れて、その影響で大きくなる。加齢にはなかなかあらがえない部分があり、肥大を“止める”方法はない。しかし、健康的な生活習慣を意識することで、肥大していくペースを遅らせることは期待できます。

 ――例えばどういう習慣を意識すればいいでしょうか

 村山 食生活だと、動物性のたんぱく質を控えて、野菜や魚の摂取を積極的にしてほしい。ちなみに飲酒習慣は予防意識のためにも、症状の悪化をさせないためにも意識してほしい習慣の一つ。前立腺肥大症は、つまり前立腺が腫れているとも言えます。そのため、過度にお酒を飲むと、一時的に前立腺がむくむ。その結果、尿の通り道を通常以上に圧迫し、排尿障害がひどくなることもありますよ。

 ☆むらやま・しんいちろう 東京国際大堀病院泌尿器科病棟医長・腎尿管結石センター長。福井医科大学卒業後、日本赤十字社医療センターなどを経て現職。日本泌尿器科学会専門医、日本泌尿器科学会指導医。悪性腫瘍ロボット手術(前立腺がん、膀胱がん、腎・尿管がん)、尿路結石手術、腹腔鏡手術などを専門とする。