【イタリア・ミラノ20日(日本時間21日)発=中西崇太】頂点の夢へ、ブレることなく戦いきった。ミラノ・コルティナ五輪のスピードスケート女子1500メートル(ミラノスピードスケート競技場)が行われ、世界記録保持者の高木美帆(31=TOKIOインカラミ)は1分54秒86で6位だった。本命種目と位置づけて金メダルだけを目指してきたが、涙の終戦。レース後には、2018年平昌五輪2冠で姉の菜那さん(33)に抱きしめられ、熱い思いを分かち合った。高木が歩んできた苦闘の4年とは――。

 表彰台ではなく、金メダルだけを狙っていた。「私ができるのは攻めること」と、最初の300メートルを全体2位で通過。中盤までスピードを保ったものの、後半に失速した。無念の結果にレース後には大粒の涙を流した。「最後の1周はつらかった。悔しい気持ちはあるけど、今はよく頑張ったと自分自身に対して思っている」と声を震わせた。

 テレビ解説を務めた菜那さんと取材エリアで再会すると、号泣しながら熱い抱擁。菜那さんから「いろんな思いがあった1500メートル、最後まで出しきれましたか」と声をかけられると「出しきれたと思います。自分の中では、だんだん1500メートルが走れなくなっていっているという感じの中で、この結果は受け入れている」と本音を吐露した。

 最後に「本当はいい結果を出して終わりたかった気持ちはあるけど、今はよく頑張ったなと自分自身に思っている気持ちはある」と涙ながらに語ると、菜那さんは「本当によく頑張りました、この4年間」とねぎらっていた。

 その後、取材に応じた菜那さんは「強い美帆をずっと見せてきてくれた。キツかったものを人には見せずにずっと戦ってきたと思う。家族として、姉として、五輪だけじゃなくて、ここまでの道のりをよく頑張ったなと思う」と妹をたたえた。その言葉通り、ミラノ・コルティナ五輪に向けてはまさに苦難の道のりだった。

 2022年北京五輪後は「やり切った感じだった」と語ったが、現役続行を決断。23年には「team GOLD(チームゴールド)」を結成して再スタートを切った。金銭的な問題や、メンバー集めなど苦労は1つや2つではなかった。引退後にトレーナーとして勉強に励む予定だったウィリアムソン師円コーチは、高木の熱烈なオファーを受けて加入。周囲の力を借りながら歩みを進めてきた。

 レベルアップのためには常に全力投球。技術面はもちろん、食事面も想像を絶するこだわりを見せた。オランダで血液や唾液などの検査を実施し、自身の体に合う食材と合わない食材を把握。調味料にまで気を配っていたという。

 師円コーチは「砂糖はてんさい糖ならいいけど、グラニュー糖はダメとか。しょうゆも小麦不使用のものを使ったりしている。体に合わない食材は、たとえ好きなものでも食べていない」と証言。「『自分は4年後のミラノで金メダルを取るために生活しているんだ』という日々を過ごしていた」と明かす。菜那さんは「金メダルを取りたい、勝ちたいと言わずに戦ってきた子が、声に出して戦うって、相当な覚悟だったと思う。最後の最後まで美帆の色を出しきってくれた。美帆の色を貫いてくれた五輪だったなと思う」と目を潤ませた。悲願成就はならずも、今大会で自身が持つ五輪の日本女子最多メダル数を10に更新。その戦いぶりは、お茶の間のファンに感動を与えた。

 全てを懸けて戦い続けたエースの軌跡が色あせることはない。