エースの影響力は絶大だ。木原稔官房長官は22日、高市早苗首相からスピードスケート女子で夏冬通じ五輪で日本女子最多となる10個のメダルを手にした高木美帆さん(32)に、国民栄誉賞の授与を検討するように関係省庁に指示を出したと公表。受賞が決まれば冬季五輪メダリストではフィギュアスケート男子で五輪2連覇の羽生結弦以来、史上2人目の快挙となる。長きにわたりスピードスケート界をけん引してきたレジェンドの存在は、随所で際立っていた。

 冬季五輪で勝ち取った日本勢のメダル数は100個。高木さんは10分の1にあたる10個のメダルを獲得するなど、世界のトップで躍動してきた。木原官房長官は「功績は競技にとどまらず、わが国のスポーツの振興および発展に多大な貢献をされたものであり、国民に広く夢と感動を与えるとともに、社会に明るい希望と勇気をもたらしました」などと説明。今後はスポーツ庁の協力を得た上で、関係者の意見を聞いて正式に判断される。

 今季限りで現役を退いた高木さんは、2023年に「team GOLD(チームゴールド)」を結成。ヨハン・デビットコーチと二人三脚で活動を始め、その後は後輩の佐藤綾乃さん、堀川桃香ら、国内外の選手を招き入れて練習に励んだ。2026年ミラノ・コルティナ五輪の女子団体追い抜き(パシュート)では、戦友たちと銅メダルを奪取。さらにチームメートの寧忠岩(中国)が同五輪男子1500メートルで金メダルに輝くなど、選手の強化に一役買った。

 輝かしい実績を誇る高木さんに対し、イフイング社が展開するTOKIOインカラミなど、複数の企業が厚いサポートを施してきた。恩恵をチームづくりに還元したことで、大きなメリットが生まれたという。あるスピードスケート関係者は「高木さんとヨハンの関係値があり、さらに高木さんにつくスポンサーのおかげで金銭面のやりくりができたからチームが成り立った。(デビットコーチは)国内外の選手を指導していたので五輪の時も会場に入れて、選手を近くで指導できたと思う」と指摘した。

 五輪の舞台は会場に入れるコーチの数が限られており、指導を仰ぐコーチが選手の側にいられないケースもあるが、デビットコーチは高木さんら多くの選手を指導。その実績からミラノ・コルティナ五輪は会場に入り、教え子たちに的確なアドバイスを送ったことで複数のメダルに導いた。

 自身が得た利益を他の選手にも分け与え、全体の底上げにつなげることで、国内外のスピードスケート界の発展に尽力。高木さんの成果は個人のパフォーマンス以外にも、多方面で表れていたのだ。

 高木さんは日本スケート連盟を通じ「国民栄誉賞について検討していただけるだけでも、光栄に思います。検討結果を楽しみに待ちたいと思います」。32歳の誕生日に届いたビッグニュース。また一つ新たな勲章が刻まれる。