【衆院選2026 私はこう見る】3連休直前の読売新聞のスクープに始まる解散までの一連の流れを見ていると、この解散総選挙は高市早苗首相とごく一部の官邸中枢の人物だけで決断したことがわかる。

 永田町には「解散と公定歩合だけはウソを言っても構わない」という言葉が昔からあるが、政権の後見人の麻生太郎副総裁や、選挙を采配する鈴木俊一幹事長の言動を見ると、まさに首相本人による与野党全てに対する奇襲解散なのではないだろうか。

 過去の歴史を紐解くと、首相の多くは、一度権力の椅子に座るとなるべく長くその座に居ようとするものだ。そのためつい解散を先送りにし、好機を逃し、結果的に退陣に追い込まれることも稀ではない。

 その意味では、就任から3か月の高市首相がこの局面で「エイヤッ」と解散を決断したことは彼女の大胆さと果断さを示す事例とも言えるだろう。私が彼女を取材するようになって30年以上になるが、実際にそのキャリアを見ると果断な政治的決断の連続である。

 平成4年に初めて国政選挙に挑戦した際は、自民党の公認争いに敗れたため無所属で出馬し落選している。郵政解散が起きた時に浪人中だった彼女は、慣れ親しんだ選挙区の変更を決断し、刺客として出馬し当選している。さらに自民党が野党だった時には、一度挫折した安倍晋三元首相を叱咤激励し、結果的に再登板を実現させている。逆境になればなるほど、勝負をしてきたのが彼女の政治家人生なのだ。

解散直後、自民党結束を呼び掛ける高市首相(ロイター)
解散直後、自民党結束を呼び掛ける高市首相(ロイター)

 今回の電撃的な解散には、第2次安倍政権を首相秘書官として支え続けた今井尚哉内閣官房参与の意向も感じられる。第2次安倍政権も、発足からわずか2年の平成26年に「消費税の増税延期」という国民受けする政策変更を掲げた総選挙を実施し、長期政権への道筋を切り開いている。

 高市首相も、今回の衆院選で「食料品の消費税を2年間限定でゼロ」にする消費税減税を公約に掲げているが、今井参与はその時の再来を志向しているのかもしれない。

 この奇襲解散の思わぬ余波として誕生したのが、これまで自民党の長年のパートナーだった公明党が立憲民主党と結成した新党「中道改革連合」である。今のところ世論調査で高い支持率を獲得しているわけではないが、おそらく自民党の議員たちは戦々恐々としているはずである。各選挙区で1~2万票前後と言われる公明党の支持層は投票率が高いため、実際の支持率以上に大きな鍵を握っているからだ。

 高い支持率を誇る高市政権だが、それに比較して自民党の支持率自体は決して高くはない。思っていたほど党勢が伸びずに公明党の離反の影響で苦戦する可能性は十分にある。高市首相が〝高市ブーム〟と呼べるような現象を選挙戦を通じて作れるかどうかが、帰趨を決めるのではないだろうか。