昨年5月、大阪市北区のタワーマンションの43階から飛び降り、歩道にいた男性にぶつかり死亡させたとして、大阪府警は14日、飛び降りた男性(当時70)を重過失致死容疑で容疑者死亡のまま書類送検した。

 大淀署によると、男性は昨年5月19日午前11時25分ごろ、タワーマンション43階の自室ベランダから飛び降り、歩道を自転車で走行中だった男性(当時59)に直撃。2人はいずれも搬送先の病院で死亡が確認された。

 書類送検された男性は同居する家族に自殺をほのめかしていたという。またベランダの手すりには乗り越えたような痕跡が確認され、自殺と断定。2人の死因はいずれも多発外傷だった。

 今回、書類送検にはどのような狙いがあるのだろか。アディーレ法律事務所の南澤毅吾弁護士に見解を聞いた。「容疑者が死亡している場合、刑事裁判は成立しないため、実務上は不起訴となるのが通例です。それでも書類送検がなされるのは、警察での捜査を形式的に完結させ、記録に残す意図があります」と解説する。

 昨年8月にも横浜市の商業施設の屋上から女子高生が飛び降り、通行中の30代の女性とぶつかり2人とも亡くなるという痛ましい事件が起きている。歩道を通行していた被害者は避けようがなく突然、不条理に日常を絶たれてしまったというわけだ。こうした悲劇を繰り返さないため、抑止として損害賠償を求めることはできないだろうか。「刑事上不起訴となっても、民事上は被害者遺族が加害者の相続人に対し慰謝料等の損害賠償請求・訴訟は可能です。死亡事故のため、数千万から1億円超の賠償額が想定される」という。

 一方で「自殺に伴う事故には、交通事故での自賠責保険のような制度が適用されないことや、相続人側で相続放棄があれば請求自体不可能になるなど、現実には賠償額の支払いを受けるハードルは高いです」と指摘する。

 どんな理由であれ、落ち度のない人を巻き込むことは許されない。