ジャーナリストの伊藤詩織氏が15日、都内の日本外国特派員協会で会見し、自身が監督を務めたドキュメンタリー映画「Black Box Diaries」の国内上映が始まったことを報告した。米アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にノミネートされる快挙となったが、海外での評価とは裏腹に国内では伊藤氏を支援してきた代理人弁護人や支援者から怒りを買う事態が続いている。

 伊藤氏は「2015年に暴行を受け、そこから10年たった。第一審で勝訴してから5年がたった。警察が逮捕に至っていれば、ここまで公表することはなかった」と振り返った。都内のホテルで元民放記者から性暴力を受けたとして告訴したものの、逮捕状が執行される直前で警視庁刑事部長の鶴の一声で取りやめとなり、最終的に不起訴となった。

 一連の経緯を記した自著「Black Box Diaries」を基に映画化に至ったが、内容を巡っては、許諾の得られていないホテルの防犯カメラ映像やタクシー運転手とのやりとりなどが使われたとして、伊藤氏の民事訴訟で共闘した代理人から問題点を指摘され、日本での公開は見送られていた。

 国内公開に当たって、伊藤氏はホテルのカメラ映像をCG加工し、問題とされる一部場面をカットするなどの修正をしたが、それでも弁護人からは法的問題を指摘され、「公益性はない」と断罪された。

 伊藤氏は「(ホテル映像はCG加工し)『裁判目的以外で映像を使用しない』という制限には該当しない。『どこまでを誓約違反とみなすか』という評価の違いがある」「性暴力と権力・制度の関係を問う作品として制作している」と反論する事態となっていた。

 この日の会見でも捜査官の身元が特定されかねない場面を引き合いに伊藤氏のジャーナリストとしての資質を問う質問が出れば、伊藤氏から名誉毀損で訴訟提起(後に取り下げ)された大手紙の女性記者が「弁護人や支援者に謝罪はないのか」と迫る場面もあった。

 伊藤氏は「(性被害の)サバイバーとしての権利がある。知る権利がある」と主張し、会見のモデレーターも「調査報道は承諾を得ないまま報じることはある。公益性が承諾を得るよりも重要なことがある」とスタンスを強調しており、双方のミゾは埋まることはなさそうだ。