【取材の裏側 現場ノート】21日に23歳の誕生日を迎えたフィギュアスケート女子・紀平梨花(トヨタ自動車)の覚悟は、記者にもひしひしと伝わってきた。

 小学校の卒業文集に「オリンピック(五輪)で優勝」と記したスケーターは、16歳でグランプリファイナルを初制覇。全日本選手権も2度制して、日本人女子2人目の4回転ジャンプ(サルコー)も成功させた。ところが、2022年北京五輪シーズンに右足首を負傷。その後は思うように痛みが引かず、直近2シーズンを全休した。

 今シーズンは26年ミラノ・コルティナ五輪が控えるも、今も完治していないのが現状だ。毎年恒例のバースデーインタビューでは、たわいもない会話に花を咲かせるのも楽しみの一つだが、紀平が「全部投げ出したくなっちゃう時はあります」と弱音を吐露した瞬間の表情は、何とも言えないものだった。

 記者は「いつ夢をあきらめてもおかしくない」と勝手ながらに思ってしまった。ただ、紀平の目はしっかりと前を向いていた。「焦りや不安とかはぬぐい切れていない部分も正直あるけど、やれる限りのことはやり切りたい。最後まで希望、少しのチャンスを信じていきたいです」

 6月末から約1か月間は、カナダ・トロントのクリケットクラブで羽生結弦らを育てたブライアン・オーサー氏の指導を仰いだ。12月の全日本選手権を見据えた上で、自らのペースで練習に励んでいる真っただ中だ。

 周囲の期待が大きいからこそ、想像を絶する苦悩を経験してきたのだろう。それでも、紀平は「神様は私に強くなるための経験をくれた」と愚直に歩みを進めてきた。すべては氷上で再び輝くために――。

「いろいろ経験してきたので、より深みのある演技にはつながると思う」。3シーズンぶりの実戦となる今季はどんな演技でファンを魅了してくれるのか。新たな〝紀平梨花〟を見られる日が今から待ち遠しい。

(運動部・中西崇太)