オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第246回は「誕生日おじさん」だ。

 平成初期に東海地方から関東に出没した怪人である。露天商であり、道端で店を開いており、誕生日のケーキを売っている。そのケーキを買ったものは漏れなく幸せになると言われている。

 しかし、魔界の存在が人間に渡したものが、人間に幸せをもたらすとは珍しい存在である。だいたい、妖怪から受け取った品物は人間に不幸を及ぼすものである。

 例えば、「豆腐小僧」から受け取ってしまった紅葉の模様の入った豆腐を食べると、全身にカビが生えると言われている。もちろん、この設定は昭和の子供向け妖怪本のオリジナル設定ではあるが、魔界の存在から品物を受け取ってはならないという原則を踏襲している。

 他にも狐や狸からまんじゅうをもらって、それを食べてしまったところ、それが実は馬のクソだったというのはよくある話だ。

 ちなみに、誕生日に命を落としてしまう人間はたまに存在する。例えば、幕末の英雄・坂本龍馬は旧暦ではあるが、慶応3年11月15日に命を落としている。ところが、天保6年11月15日は龍馬の誕生日でもあるのだ。

 また、余談だが、露天商という職業は妖怪視されやすい。当然、単なる言いがかりなのだが、街から街へ渡り歩いて商売を行うことは、異人扱いされたのだ。例えば、代表的な例としては、フーテンの寅さんなどは明らかに異人である。興味深いことに、露天商が行っている神事は民俗学の研究対象になりやすいのだ。