トランプ米大統領はロシアとの関係の全般的改善を望んでいることが、3月23~25日にサウジアラビアの首都リアドで行われた米ロ、米ウクライナ協議の過程で明らかになった。
アメリカは、ウクライナの意向に耳を傾けずに対ロ制裁の緩和に向け西側連合諸国に働きかけていくと筆者は見ている。アメリカの目的は、ウクライナの利益を代表することではなく、米ロの戦略的提携(帝国主義的棲み分け)を実現することによって、トランプ大統領が考えるところのアメリカの国益を増大することだ。
バイデン前政権は、ロシアの侵攻に対するウクライナの戦いを自由、民主主義、人権を擁護する西側共通の価値観をまもるためのものと位置付け、支援した。ただしバイデン政権はウクライナがロシアに勝利するレベルの支援を行うと、劣勢になったロシアが核兵器を使うことになると恐れた。そのため、ウクライナがロシアとの戦争を継続することはできるが、勝利することはできない質と量の軍事支援しか行わなかった。戦争の長期化によってロシアの経済が崩壊し、国民の不安が爆発して、プーチン政権が弱体化すると計算したのだ。
しかし、この計算は、間違っていた。西側連合の経済制裁によって、ロシアはアウタルキー(閉鎖経済)化に成功し、国力が増強された。食料とエネルギーが自給できるロシアのような国家を経済制裁によって弱体化できるという発想がそもそも間違っていたのだ。
トランプ現政権は、ウクライナ支援を外交的「不良債権」と見なしているようだ。米ロの取り引きのなかで、ウクライナは「釣り銭」のような扱いを受けている。バイデン前政権の代理戦争を引き受けたツケをトランプ政権下でウクライナは払わされているのだ。
アメリカに翻弄され、もっとも苦しんでいるのはウクライナの普通の国民だ。この戦争が続いても、ウクライナも西側連合も目的を達成することはできない。一刻も早く武器を置き、1つでも多くの命を救うことが重要と思う。
ロシア・ウクライナ戦争から日本が学ぶべきは、大国政治のゲームから距離をとって、絶対に戦争に巻き込まれないようにすることだ。岸田文雄前首相が繰り返し述べていた、今日のウクライナは明日の東アジアであるというのは真理だ。日本がアメリカの代理人になるとひどいツケを払わせられることになりかねない。
☆さとう・まさる 1960年東京生まれ。85年、同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省に入省。ソ連崩壊を挟む88年から95年まで在モスクワ日本大使館勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍した。20年、「第68回 菊池寛賞」を受賞した。最新著書は池上彰氏との共著「トランプ人気の深層」(宝島社新書)がある。












