妖精といえば、おとぎ話の絵本に出てくる姿を思い浮かべる人が多いだろう。手のひらに乗るほど小さく、美しい姿をして背中に蝶のような羽を生やしている姿がありがちなものだが、中には毛むくじゃらだったり老人の姿をしているなど、お世辞にもかわいらしいと言えないものも多い。日本でいうところの「妖怪」に近いものが含まれているのだ。

 妖精伝説が多く残っているのは英国だが、かつてこの地に住んでいたケルト族の文化の影響もあり、英国では現代でも妖精の存在を信じている人が多いという。そんな妖精伝説の残る英国でとんでもない写真が撮影され、世界中を驚かせることになった。

「コティングリーの妖精」騒動だ。

 1920年、ブラッドフォードに近いコティングリー村に住むエルシーと、彼女のいとこのフランシスという2人の少女がエルシーの父親に借りたカメラで5枚の写真を撮影。そこにはなんと、彼女たちと遊ぶ妖精たちの姿が写っていたのである。

 この写真はシャーロック・ホームズシリーズの生みの親であるコナン・ドイルのもとに送られ、彼が「偽造ではない、本物の写真である」と雑誌の記事で断定したために大論争が巻き起こった。

「ガラス原板をいじった偽造ではないか」とする説も出たが、まだ幼い彼女たちがカメラの機構を理解して偽造できたとは考えにくく、写真は本物であると考えられたのである。
 だが、後に彼女たちは取材に来た記者たちに写真が捏造であったことを告白した。

 フランシスはエルシーとよく森で遊んでいたが、そのたびに泥で靴や服を汚してしまっていた。彼女は汚した言い訳に「妖精を見に森に行っている」と言っていたのだが、本物の写真があれば大人が森に遊びに行くのを許してくれるだろうと考え、2人は絵に描いた妖精と一緒に写真を撮ってみせたのである。

 しかし、5枚の写真のうち1枚だけは本物、「本当に妖精が写ってしまったもの」だと断言したのだという。茂みで動いたものに慌ててカメラを向けて撮影したのだと——。

 くだんの写真には、中央に繭(まゆ)に包まれたようなうっすらとした妖精の姿と、左右に羽を生やした妖精としか思えない人型の何かの姿が写っている。そして、最新技術でネガが鑑定されたところ、この写真にだけは偽造の証拠が認められないという結果が出されたのだ。

 なお、この妖精が撮影された写真機と写真のガラス原板は日本の研究家、井村君江氏の手元に渡り、うつのみや妖精ミュージアムにて展示されている。

 英国では今でも多くの人が妖精の存在を信じ、中には「妖精のミイラ」などのアート作品を作製する人も存在する。こちらの妖精のミイラはお台場デックス東京ビーチにある「山口敏太郎の妖怪博物館」で実物を観賞することができるので、興味のある人は見に行ってみてはいかがだろうか。