【山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑#562】米国において「悪魔」と名が付けられるUMAといえば、「ジャージー・デビル」が有名だ。悪魔崇拝者の赤ん坊が姿を変えた存在といわれ、コウモリの翼が生えたような外見に加え、凶暴性や俊敏性を有する存在として恐れられている。
そんなジャージー・デビルの西海岸バージョンとも言えるUMAが「ローン・パイン・マウンテン・デビル」である。カリフォルニア州を中心に現れたというこのUMAは、カミソリのようなツメと幾重にも重なったキバ、そして複数の大きな翼の生えた姿をしており、その性格は極めて残忍かつ凶暴だという。
19世紀半ば、南西部の荒れた砂漠や荒野において、虐殺されたコヨーテやヤマネコの死骸が多数発見され、初期の入植者たちを中心にローン・パイン・マウンテン・デビルのうわさが拡大。さらに入植者のある一家が何者かに骨まで食い荒らされたといううわさもささやかれるようになったという。
ローン・パイン・マウンテン・デビルの被害として有名な記録は、1878年のものがある。ある日、スペイン人入植者たち男女子供含む37人を乗せた数台のほろ馬車がシエラ・ネバダ山脈を進んで目的地へ向かっていた。ところが、いつまでたっても一団が目的地に到着することはなかった。
数週間が経過した頃、一団の1人であったジャスタス・マルティネス神父が衰弱した姿で目的地の村に現れた。衣服と日誌だけを携えていた彼に対し、何があったか尋問が行われたものの、彼は語ろうとはしなかった。
そこで、彼の持っていた日誌を確認することになったのだが、そこには一団がある夜に火をともして宴会を開いていたところ、木々の間から「翼のある悪魔」が数体現れ、一団を襲撃したという旨が記されていたという。
神父は、1人離れた場所でテントに入っていたため被害を免れたが、その襲撃の様子を目撃してしまったことの恐怖から、自らの口で語ることができなかったようだ。約2か月後、崖の奥底からほろ馬車と入植者たちの腐敗した死体が発見されたという。
ローン・パイン・マウンテン・デビルは、目撃者の証言との共通点が多いことから、白亜紀に存在していた羽毛を持った恐竜シノルニトサウルスのような生物ではないかとの説もある。だが、シノルニトサウルスは中国で化石が発見されているものの米国では報告がなく、別の生物ではないかとも考えられた。
ところが、2021年になってこの話は急展開を迎える。UMAを扱うユーチューブチャンネル「クラッシュ―コース クリプトズーロジー」がローン・パイン・マウンテン・デビルについてのドキュメンタリーを制作した際、調査によってこの伝説がフェイクであったことが判明したのだ。
2010年に、チャド、マット&ロブという映画製作者グループによって「マウンテン・デビル・プランク・フェイルズ・ホリブリー(山の悪魔の悪ふざけは大失敗)」というホラーコメディー短編ビデオが公開されており、この作中で登場する生物の姿がローン・パイン・マウンテン・デビルを目撃したという人物のスケッチに酷似していたのだ。さらに、カリフォルニアに伝わる民間伝承としての説明も作中で語られるも、現地の聞き込みではその伝承を知る人がいなかったという報告もなされた。
このオリジナル映像は現在失われてしまっているものの、その動画を見た人々によって伝説化した存在がローン・パイン・マウンテン・デビルの真相であったのかもしれない。












