オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第150回は「ひとのみ」だ。

 山に生息している妖怪である。ひとのみが通ったあとには、下半身だけの猿や頭部だけの鹿が残されているという。通りながら、山の獣をひとのみしてしまうようである。かなり恐ろしい妖怪である。

 ひとのみが通る直前には、山の神様が山で働く人たちに警告を発してくれるそうだ。子供の声で耳元で「ばくが来るぞ」とささやいてくれるらしい。そのため、別名「ばく」ともいう。

 通常、バクというのは、人の夢を食べる霊獣である。特に悪い夢を食べてくれると言われており、枕にバクの絵を挟んで寝る習慣の地域も存在している。名前は同じだが、違う妖怪と判断しても良いだろう。

 あえて似た存在を列挙するならば、伝承妖怪では「赤舌」である。これは飢饉を引き起こす妖怪とされ、巨大な姿をしており、大きく口を開けて舌を出している。これなどは大きさといい、大きく口を開けている点といい、関連が深いといえよう。

 また、現代妖怪としては「山くじら」が連想される。この妖怪は地中をモグラのように移動するのだが、体が非常にでかい。この妖怪はひとのみに近い存在だと言っても差し支えないだろう。