【多事蹴論(78)】知られざる“親子の流儀”とは――。キング・カズこと元日本代表のエースFW三浦知良(56=オリベイレンセ)と元日本代表MF三浦泰年(58=JFL鈴鹿監督)の実父、納谷宣雄氏が9月8日に亡くなった。享年81。生前はサッカー関連の事業に取り組み、ブラジルに多くの留学生を送り込むなど、日本サッカー強化の一端を担った。
次男のカズも父の後押しを受け、静岡学園高を1年で中退し、ブラジルで武者修行。納谷さんは地方の試合でも観戦に訪れていたという。納谷さんの事業をサポートするとともに公認選手代理人としてカズを担当してきた田路雅朗氏は「カズヨシにとって親父は特別な存在だったんだよ。いつも意見を求めていたし、日本代表になってスター選手になったのも親父のおかげと言っても過言ではないな。おおげさではなく二人三脚で歩んできたから」と目を細めた。
まだ若手だったブラジル時代は“父子鷹”だった。納谷さんはサンパウロ州サッカー連盟の理事も務めていたように競技に精通。ブラジル人選手を日本に紹介するなど確かな眼力を持っていた。カズも成長するため、父親に可能な限り自身の試合を観戦することを要求し、アドバイスを欲した。田路氏は「カズヨシは毎試合後に“親父、どうだった?”と聞きに来るんだよ。それが親子のルール。取り決めだったからな」と語る。
ただ、田路氏によると、納谷さんはカズが好パフォーマンスを見せたときには「良かったよ」とほめるが、あまり良いプレーではなかったときには「まあまあ」とあいまいな返答を繰り返したという。するとカズは「何が悪かったんだ」としつこく食い下がったそうだ。そんな2人のやりとりを見かねた田路氏が納谷さんの心中を解説した。
カズのブラジル時代に納谷さんとともに試合を観戦する機会も多かった田路氏は「親父は消極的なプレーが嫌いなんだ。だからカズヨシが突破を仕掛けられる場面で味方にパスすると、すぐに機嫌が悪くなる」とし、その見解を本人に説明すると「カズヨシは『ボールを失うよりもいいだろ』って反論するんだけど、取られてもいいから仕掛けろっていうのが親父の真意だから」。
さらに「チームメートとの信頼関係や状況をよくするためとかって言い出すんだけど、親父も俺もカズヨシにはエースになってほしい。だから『周りを気にするな』とね。『ドリブルで突破すればチャンスになる。それがチームのためになるんだ』って。毎試合のように、そんな感じのやりとりがあったから、カズヨシはドリブルで相手を抜いて、ゴールも取れるようになったんだよ」と解説した。
カズは1990年に読売クラブ(現J2東京V)入り。その後はゴールを量産し「日本のエース」と呼ばれたのも、親子二人三脚の成果だったに違いない。 (敬称略)












