オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第159回は「バツさま」だ。

 いわゆる“ひでり神”である。「バツさま」というネーミングは、旱魃(かんばつ)のバツに由来するものと推測できる。

 基本的に透明な姿で頑丈な体をしており、道路で車と接触することもある。はねても姿を現すことはない。鋼鉄の体をしており、車などにはねられでも全くダメージはないという。聞こえるのは「はぁはぁはぁ」という荒々しい鼻息だけである。この辺から、とんでもないパワーファイターだということが分かる。

 ちなみにバツさまを車ではねてしまった年は作物が不作になってしまうという。人間に対して強い怒りを覚えたのであろうか。逆に何もなかった年は豊作になるとされている。

 それにしても、人間の命をつかさどる、作物の凶作、あるいは豊作が単なる妖怪によって左右されてしまうとは、なかなか香ばしいものがある。天候であったり、気温であったり、植物の病気であったり、さまざまな原因が不作にはあるのだが、昔の人は妖怪の仕業とでもしないとあきらめきれなかったのであろうか。

 この前近代的な妖怪が今も語り継がれるとはいささか不可思議な感じがする。