オカルト評論家・山口敏太郎氏が都市伝説の妖怪、学校の怪談、心霊スポットに現れる妖怪化した幽霊など、現代人が目撃した怪異を記し、妖怪絵師・増田よしはる氏の挿絵とともに現代の“百鬼夜行絵巻”を作り上げている。第155回は「両面宿儺(りょうめんすくな)」だ。

 頭部が2つ、手が4本、足が4本の怪物である。神話時代に現在の岐阜県(飛騨国、美濃国)で暴れ回り、朝廷軍によって討伐された地方の豪族的存在である。

 両面宿儺はその容姿が特異なため、あくまで伝説上の架空の存在であると推測される。一方、リアルな人物であり、双子の豪族のことをそう呼んだとも推測される。どちらにしろ、中央政権に逆らって、反逆した地方在住の抵抗勢力だといえる。

 最近、この両面宿儺が、現代妖怪としてにわかに注目を集めている。当初、ネット怪談の「死ぬ程洒落にならない怖い話」の一つとしてうわさされた。

 中国伝来の呪術にモデルがある。これは毒のある動物や虫を一つの瓶に入れて、共食いをさせる。結果的に生き残った動物を殺して、その魂を霊的奴隷として使うことになる。この呪法は「犬神」を作り出す時の技法と似ている。こうして生き残った人物こそが二重胎児の両面宿儺であった。

 そのまま両面宿儺を飢餓状態に持っていき、ミイラ化し、箱に封印し呪術として利用したのが「両面宿儺の呪法」である。この時のミイラは漁師の手によって、日本と韓国の間の水域に遺棄されたのだが、対馬の霊感の強い人物によって、日本の「護り竜」とにらみ合う巨大な両面宿儺が目撃されている。

 両面宿儺は人気漫画「呪術廻戦」にも登場するなど、令和において、華麗なる呪神としてよみがえったのである。