保険金の不正水増し請求から次々と疑惑の渦中にあるビッグモーター(BM)は、1日に本社を東京・六本木から多摩市に移転した。店舗統合などの経営合理化で、再起を図ろうとしているが前途は多難だ。BMが生き残る手はあるのか?

 一連の問題を受けた7月の会見で、BMは創業者の兼重宏行社長と長男の兼重宏一副社長が責任を取って辞任を発表。しかし、不正の全容解明はできていない。

 その後も街路樹への除草剤騒ぎ、顧客から車の買い替えで「廃車にするしかない」とウソをつかれて不当な契約を結ばされた、水没車を売られたといった訴訟も噴出しており、もはや中古車販売でトップを誇ったブランドは完全に失墜している。性加害問題で揺れるジャニーズ事務所同様、「同族経営の弊害」といった声も聞こえてくるが、BMに再生の道はあるのか?

 経済評論家の山本伸氏はこう話す。

「今のまま生き残るのは厳しい。客の信頼を完全に失っているので、当然、BMの名前を残すことも難しいだろう。ただし、同業者はBMの営業網をノドから手が出るほど欲しい。中古車販売業はカネを生む業界で、買い手が現れないことはまずない。そのためにも兼重親子が保有している株を手放して、完全に関係を絶つことが必須条件となる」

 全国に250店舗以上を構える営業網は、今後の事業拡大を狙う競合他社にとって魅力的かもしれない。とはいえ、疑惑まみれのBMをただ買収しても、自社への風評を生むだけでシナジー効果は期待できないだろう。果たして、それでもBMを買収する企業は現れるのか?

「兼重親子が株を手放すことと同様に重要なのが、投資ファンドが中古車販売業者とタッグを組んで買収すること。このまま何もしなければ倒産リスクがあるので、兼重親子の株は足元を見られて買い叩かれる可能性が高い。投資ファンドは買った株を高く売るために全力で健全経営に立て直す。これこそが信頼回復のための重要な要素となる」(山本氏)

 投資ファンドといえば、最近はセブン&アイ・ホールディングスが傘下のそごう・西武百貨店を米投資ファンドに売却したニュースは記憶に新しい。何かといえば弱った企業を安く買い叩いて高く売る“ハゲタカファンド”と揶揄されるが、基本的な行動原理は企業価値を高くして売ることにある。何も悪いことばかりではない。

 また、買い叩くといっても買収には多額の資金が必要になる。しかし、これだけの問題を抱えるBM買収に銀行の直接融資は期待できない。それだけに間に投資ファンドが入ることで、銀行が融資しやすくなる環境をつくることも必要なのだ。

 たった一代で“帝国”を築いた兼重氏は、株を100%保有して影響力を残したままトップの座を辞することで問題の幕引きを図ろうとしたが、先月19日に金融庁の立ち入り検査があったように現状では立て直しのハードルは高く、今後の行方が注目される。