――この夏は最新作「なつもん!」がヒット。モデルとなった地域はあるのか
綾部 具体的な地名は出していませんが、北陸地方をモデルに選びました。そのまま似せるということはなく、ゲーム全体の下地にさせてもらった感じですね。
――今回は1999年が舞台
綾部 現代にしなかったのは、ある程度フィクションの世界にしないとプレーヤーが遊ぶ時に重く感じちゃうということが理由ですね。そもそも現代が舞台なら、リアルに外で遊べばいいという話になりますし。
――確かに実際に体験できないが故の魅力がある
綾部 ゲームを現実から遠ざけるためには時代を変えるか、ファンタジーにするかなんですが、うちのように時代だけ変えて中身はリアルというゲームは少ないので、うまくニッチなところを狙えているのかもしれません。私は昔のものの〝埋蔵量〟が好きなんです。掘れば掘るほど面白いものが出てくるところに、現代にはない魅力を感じます。
――99年という年にこだわりは
綾部 99年にこだわりはありません。実際はさらに古い時代を意識して作っていますし。2000年以降になると、いろんな意味で、もう現代と変わらないでしょうね。
――これより新しい時代は扱わないのか
綾部 もし今後2010年代のゲームを作るとしても、中身は昭和らしくするかもしれないし…。今後の作品の舞台も、今のところは99年より後にならない気がしますね。
――今回のナレーションは俳優の藤木直人が担当した
綾部 収録で第一声を聞いた時に、すごくはまっていて「やった!」と思いました。このゲームの主人公はどちらかと言えばおとなしく礼儀正しい感じなので、キャラクターの立たせ方が難しいのですが、藤木さんはすごくピッタリでしたね。
――「ぼくなつ」シリーズ皆勤賞のダンカンも出演する
綾部 ダンカンさんは放送作家をされていて、私にとってはアイデアの出し方などを教えてくれた「先生」なんです。今回久しぶりにお会いできてうれしかったですし、どんな演技をしていただけるかは分かっているので、台本も当て書きで作ってしまいました。こんなこと言ってると「綾部何言ってんだ」ってツッコまれそうですけどね(笑い)。
――システム面ではオープンワールド形式が採用され、町を自由に探検できることも特徴だ
綾部 自由度が飛躍的に増えましたね。そのおかげで偶然がドラマを生むことも増えました。例えば開発中のゲームで、灯篭流しが行われている海岸で夜釣りをしていたら、大物を釣り上げた瞬間に海の向こうの山から花火が上がる、なんてこともあって。ゲームの中でいろんな人がそれぞれ勝手に生きているからこそ経験できるドラマなので、これは面白いぞと思いましたね。
――ゲームの方向性も一部変えたのか
綾部 それが元々90年代から「グランド・セフト・オート」という自由度の高いゲームが好きで、「ぼくなつ」を作った時点でも強く意識していたんですよ。だからやっていること自体は変えてないし、オープンワールドになったから方向性を変えようという発想はあまりなかったですね。
――SNSでは多くのユーザーが自由なプレイ動画を投稿している
綾部 プレイされた方の多くが、アクションゲームとしてこのゲームの派手な部分を楽しんでいたことにビックリしました。もちろんそういった楽しみ方は用意していましたけど、皆さん想像以上にどんどん山に登るし、想像以上に破天荒な行動をしているな…と。
――驚いた、と
綾部 はい。いい意味でもう少し地味なゲームだと私は思っていました。短期間で作り上げたゲームで想定外なことはいろいろありましたが、他にはないゲームの方向性を示せたと思っていて、そこが良かったのかもしれません。自信を持って皆さんにおすすめできる作品になったと感じています。
――今日は8月31日です
綾部 31日でいうと、初代「ぼくなつ」には8月31日でゲームが終わらずに8月〝32日〟に行ってしまうバグがあったんですよ。ただ今回の「なつもん!」に〝32日〟はありませんので、安心して遊んでいただきたいです(笑い)。それに9月に入ったら夏休みのゲームをしてはいけない、なんてことはありませんので。現代では9月末でも真夏だし、10月でもまだまだ夏だったりしますからね。特に外に出られないような気温の日には、ぜひゲームの中で夏休みを追体験していただけたらうれしいです。
☆あやべ・かず 1965年生まれ。北海道出身。ゲームデザイナー。86年からゲーム制作に携わり、97年にゲーム制作会社ミレニアムキッチンを設立。2000年に発表した代表作「ぼくのなつやすみ」はレトロな内容が人気を集め、「4」まで発売される人気シリーズとなった。最新作「なつもん!20世紀の夏休み」はスパイク・チュンソフトより発売中。



















