敗戦も悔いはない――。朝倉未来がプロデュースする1分間格闘技「BreakingDown9」(26日)で、初めてリングの上に立った〝所沢のタイソン〟こと久保広海(41)はごぼうの党の奥野卓志代表(49)にKO負けを喫した。タイマン無敗伝説が崩壊した久保だが、取材に対してその胸中を明かした。
久保氏は幼少期からケンカに明け暮れ、ついたあだ名が〝所沢のタイソン〟。これまで地下格闘技も含めて、リングの上で戦ったことはないためアウトロー界では伝説の男と畏怖される一方、その実力は眉唾ものともされてきた。
ブレイキングダウンに出場こそ決まったが、前日の記者会見、当日の公開計量に姿を現さなかったことで、最後までドタキャンするものと思われていた。久保は「オーディションの時から完全アウェーで、いろんな人からユーチューブでも揶揄されてきた中、出場を断ることもできたが、あそこまで騒がれて、逃げたらそれが一番ダサイ」とリングの上に立った。
運営からは〝裏メインイベント〟として扱われるなど異様な緊張感の中、久保は序盤こそ猛攻を仕掛けたが、奥野氏も学生時代に〝吉祥寺の太尊(タイソン)〟といわれたケンカ屋。20センチの身長差から繰り出す奥野氏のリーチの長いパンチに対応できず、たまらず背を向けてしまった。
「ちょっと後頭部にパンチが入って、そこでグラッと来ちゃった。倒れたくないから金網をつかんでたら、後ろからバンバン殴られた。途中でブレークが入ったところがあるが、ケンカだったらチョーパン(頭突き)かますところ。初めてリングの上で戦いをして、ケンカとはまったく別物なんだと分かった」。連打を浴びたためにレフェリーがカウントを取り、KO負けとなった。
これまで久保はタイマンで2~3戦のドローこそあるが、負けたことはないと豪語していた。「『3000戦無敗』とか幻想がある中で、本音で言えばやりたくないわけですよ。逃げたら男じゃないというのはあったんで、堂々とリングに立って、戦って悔いはない。勝負は時の運もある。結果、負けましたけど、そこに対して恥じることはない」と〝初黒星〟にもスッキリとした表情を浮かべた。
試合前はアンチからの攻撃にさらされたが、ガムシャラに戦う姿に試合後は「嫌いだったけど試合を見て感動した」「勝敗関係なくカッコよかった」などと応援のメッセージが寄せられた。「9―1くらいで称賛のメッセージで、誹謗中傷されていた時からだいぶ流れは変わった」
因縁のあった瓜田純士からは試合前に「広海、男、見せろよ」と激励され、わだかまりも一瞬で溶けた。出場したことで得られたものは多かったと振り返った。
格闘技のリングに立つのは「最初で最後」と決めており、リベンジマッチや別のオファーを受けても試合をするつもりはないという。これまで通り、アパレル、ラッパー、自警団の活動を変わらずに続けていく。
「有名になりたいとか、そういうのでやったわけではない。〝タイソン〟を名乗るな、返上しろというのもあるが、オレがつけたワケではないんで、違う名前を考えてくださいよ(笑い)。名前なんてなんだっていい。あと一段落付いたんで、地元で『所沢のタイソンのガールズバー』を今度、オープンしようかなと」
膨れ上がった幻想の中に生きていた久保は、ようやく〝タイソンの呪縛〟から解き放たれたようだ。