大快挙だ! 陸上の世界選手権第7日は25日、ブダペストで行われ、女子やり投げ決勝で前回銅メダルの北口榛花(25=JAL)が66メートル73をマークして金メダルを獲得した。日本女子では26年ぶり3人目の世界一だが、フィールド種目では初の頂点。日本陸連が定める選考基準を満たし、陸上の日本勢で第1号となる2024年パリ五輪代表に決まった。その裏にはやり投げの本場で身につけた“強さ”があった。

 メダル獲得も危うくなった勝負の最終6投目。ダイナミックな助走から放たれたやりが、2メートル47センチ離されていた首位・ルイスフルタド(コロンビア)の65メートル47センチを越えて66メートル73センチに届くと、両拳を握って見守っていた北口は跳び上がって歓喜を爆発させた。一発逆転のビッグスローでトップを奪うと、後続選手は記録を伸ばせず、この種目で日本人初の優勝が決まった。

 3投目で63メートル00センチを叩き出して2位に上がったが、一時は4位に。まさに崖っぷちからの大逆転劇だった。先月にポーランドで行われた世界最高峰ダイヤモンドリーグの大会では、67メートル04の日本新をマーク。これも6投目で、ラスト一投の強さを見せつけた。

 この底力には、二人三脚で歩んできたチェコ人のセケラク・コーチも驚いた様子。早々と金メダルを渡された北口は胸にかけ、日の丸を広げてポーズもとった。TBSのインタビューに「最後の投てきで自分が投げれるって信じてよかったなと思いましたし、5投目までで終わってたら本当に後悔すると思ってたので、必死に投げてよかったなと思います」と振り返った。「自分が必ず歴史をつくるというふうに決めて、ここにやってきた」と覚悟も明かした。

 土壇場で見せた強さの秘密は“海外仕様”の心技体にある。2019年からやり投げの強豪・チェコを拠点に活動。世界トップレベルの指導に当初はついていくのがやっとだった。言葉も理解できない異国の地ならではの壁にぶつかったが、逃げずに競技と向かい合った。

 そんな北口について日本代表OBは「やっぱり海外でもまれているのがいいんでしょうね。高いレベルの選手と一緒に練習をしたり、試合に出場することで、体が自然と高いレベルになっていったのでは」と飛躍の要因を挙げた。さらに同OBは「今までは自分でなんとかしなくてもいい場所にいたけど、そうじゃないからこそ得ているものもあると思う」と指摘した。

 実際、独学でチェコ語を習得。大会中にチェコのテレビ局の取材にチェコ語で対応する場面もあった。その様子はX(旧ツイッター)で拡散され、男子棒高跳びの日本記録保持者・沢野大地氏は「すご。」と投稿。多くの陸上ファンからも驚きの声が上がった。競技以外も努力を重ねたからこそ、大舞台で最高のパフォーマンスを発揮できたのだ。