東京電力は24日、福島第1原発で発生した汚染水を浄化処理した処理水の海洋放出を開始したと発表した。今後30年程度をかけて放出を続けていく。

 海洋放出を巡っては、地元漁業者から風評被害を訴える声が上がっているが、海外でも中国が強く反発。海洋放出が開始されると、すぐさま中国外務省の汪文斌報道官が「中国はこれに断固とした反対と強烈な非難を表明する」と会見を開き、中国税関は日本からの水産物輸入を全面禁止すると発表した。

 予想された反応とはいえ、中国ほどの大市場が輸入全面禁止となれば、少なからずその影響は出る。実際に水産庁のデータを見ると、2022年度に日本が輸出した水産物の総額は3873億円で、そのうち中国向けは22・5%、実に871億円に上る。さらに内訳をみると、50%以上の467億円を占めているのがホタテだ。それだけにホタテ養殖業に携わる人たちは気が気ではない。

「中国向けのホタテの多くは北海道産だが、これが輸出できないとなると国内消費に代わる。そうすると需給バランスが崩れて、国内のホタテ価格が大きく下落する可能性がある。養殖業者はほとんどが中小で、下落幅次第では大打撃になるかもしれない」(ホタテ養殖業関係者)

 ホタテの養殖は管理が大変な上に年数も要する。それだけに価格の下落は生産者の大きな負担となってしまうのだ。一方で国内の消費者にとっては朗報かもしれない。ホタテはすしネタでも人気だが、これまで回転ずしではお目にかかれなかった立派なホタテが庶民価格で提供されやすくなる可能性はあるという。

 しかし、水産庁のデータからもわかるように、中国でも日本のホタテは大人気だ。今回の輸入全面禁止で“ホタテ難民”となる中国人はどうするのか?

 経済評論家の山本伸氏は「日本のホタテはすしネタとして世界的にも人気で、中国が輸入全面禁止しても、その分をほかの国がある程度は吸収する。中国は表では過激なことをしながら、裏で第三国を迂回させた日本のホタテを中国国内に流通させる可能性が高い」と指摘した。

 今や言行不一致は中国の“得意芸”とも言えるが、今回も処理水の海洋放出を外交カードに使ってきた形だ。