日大アメリカンフットボール部の不祥事が、さらなる波紋を広げている。部員の違法薬物所持で逮捕者を出したばかりか、コーチによるパワハラ行為まで発覚。一連の問題で今年度から復活する予定だった私学助成金の給付が不透明な状況となり、大学の懐を直撃する可能性が出てきた。また、現役の学生たちの間では就職活動へ向けて不安の声が広がっている。
日大が一連の不祥事で窮地に立たされた。日本私立学校振興・共済事業団は、2020年度に日大に対して約90億円の経常費補助金(私学助成金)を給付。しかし、田中英寿前理事長らの不祥事により、21、22年度は不交付措置となっていた。日大では当初、今年度から交付再開を見込んでおり、大学ホームページの「令和5年度(23年度)予算の概要」には「補助金収入が全額不交付であった私立大学等経常費補助金が75%減額交付されることにより22億円の増収」と記載されている。
同事業団の担当者は「(日大に交付されるかは)現時点で決まっていない。10月下旬の会議で検討し、決まらなければ1月の会議で再度検討する」と説明し、交付されるかは不透明。今回の不祥事を巡っては大学側の対応も問題視されており、同事業団は「体育会系組織というよりは、学校運営に問題がないか、日大側と事実確認を行う」と厳しくチェックしていく方針だ。
仮に今年度も全額不交付となれば、予算に組み込んでいた「22億円」が消滅する格好。日大が受ける財政面のダメージは決して小さくない。さらに、不祥事による影響は大学本体にとどまらず、全く非がない現役の学生たちにまで及んでいる。中でも〝死活問題〟となるのが、就職活動だ。
ある学生は就活への影響について「個人の戦いなので関係ないと思います」と話す一方で、別の学生からは「日大のブランドが落ちた。会社の見る目が変わるのでは」「(実際に面接を受ける)誰がというよりも、どこの大学がっていう印象が強く残ると思うので、いい加減にしてほしい」と大学への不満の声も上がっている。
学生の就活事情にも詳しい労働社会学者で千葉商科大学の常見陽平准教授(49)は「(採用側にとっては)問題ないと思う。むしろ、就職活動で(学生が)萎縮するほうが不安です」と指摘し、日大生たちの心理面に及ぼす影響を懸念した。いずれにせよ、いまだに騒動の収束は見えない状況。事態の混乱を招いた大学側の責任が、改めて問われることになりそうだ。