78回目となった「終戦の日」である15日、東京・九段北の靖国神社には多くの参拝者が詰めかけた。新型コロナウイルスが5類感染症へと移行し、繁華街もかつてのにぎわいを取り戻している中、1年で最も騒がしい日となる靖国神社はどうだったのか。これまで靖国参拝の経験がなかった記者が、初めて足を運んで見た光景は――。

 東京メトロの九段下駅から地上に出ると待っていたのは、中国政府批判や拉致問題の解決を訴えるビラや新聞を配布するさまざまな団体の人々だった。一度、足を止めると次から次へと渡されてしまい、その数は十数枚にもなった。中身もぎっしり詰まった重さがあるもので、いきなり〝洗礼〟を浴びた。

 靖国神社周辺は多くの警察官や機動隊に関係車両、さらにバリケードが配置され、物々しい雰囲気に包まれていたが一歩、境内に足を踏み入れると参拝者が穏やかに本殿へと向かっており、静かな空間が広がっていた。

 国旗を持った人や、軍服に身を包んだ団体がいる中で、若者や外国人の姿も多く、神社全体が厳粛な雰囲気ということではないようだ。暑さが厳しかったこともあり、マスクをしていない参拝者がほとんど。参道沿いの売店ではビールやかき氷を購入し、涼む人も多く見られた。

 また、軍服姿の人々と記念写真を撮影する子どもの姿や、小学生であろう男児が保守派の団体に交じって軍歌を歌っている光景も目にした。本殿では全国戦没者追悼式の音声中継が流れ、正午の時報に合わせて1分間の黙とうが行われた。その後はどこからともなく「天皇陛下万歳!」と叫ぶ声が上がり、「これが靖国なんだな」と実感。その後は粛々と参拝が続けられた。

 初めて靖国神社を訪れた身からすれば想像以上の人の数ではあったが、かつての様子を知る人々からすれば、コロナ禍前のような人出はまだ戻っていないという。

 軍服姿で参拝に訪れたという男性は「昨年よりは多いけど、コロナ以前と比べるとね」と語れば、参道のみやげ店店員は、「(客足は)10分の1くらいじゃない? 今年は台風で来られない人もいっぱいいるから」と台風7号の影響も多少はあったようだ。

 そして午後4時からは、もはや恒例となっているという「反靖国」のデモが行われるとのことで、デモ隊が出発するJR御茶ノ水駅近くに向かってみた。参加者は数十人ほどだが、その数倍はあろうかという人数の機動隊員に守られながら靖国参拝や天皇制反対のシュプレヒコールを上げ、靖国神社へ向かって、行進を開始した。

 道中では、カウンターといわれる保守系の反対勢力がデモ隊の列に割って入る衝突が各所で繰り広げられた。自分のすぐ横で突撃するために待機していた男性がいて、直後に機動隊に取り押さえられる異様な場面にも遭遇し、恐怖感すらも覚えた。

デモ隊同士が衝突
デモ隊同士が衝突

 デモ隊とカウンターが最も火花を散らす九段下の交差点では、シュプレヒコールの応酬合戦となったが、ここでは完全にバリケードで両者が接触できないようになっており、大きな混乱には至らなかった。それでもその後、デモ隊の中から機動隊員への暴行で逮捕者も出たようだ。

 この両陣営のにらみ合いも例年に比べれば、参加者は減っているという。靖国神社への参拝者がコロナ禍明けでも回復していないことも含め、終戦から80年近くになろうとしている中、靖国参拝や終戦の日に対する意識が薄れてしまっているのかもしれない。