〝強行出場〟の理由とは――。大相撲名古屋場所4日目(12日、愛知県体育館)、新大関の霧島(27=陸奥)が小結琴ノ若(25=佐渡ヶ嶽)を送り出して初白星を挙げた。今場所は肋骨のケガで初日から3日間を休場。全休して万全の状態に戻すことが得策とみられていた中、あえて途中出場に踏み切った。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(39=本紙評論家)は「本当は痛いはず。完治はしていない」と指摘した上で、霧島の心情を解き明かした。

 霧島が大関初出場で初白星を挙げた。鋭い出足から右を差すと、かいなを返して琴ノ若の小手投げを封じた。その後は横向きになった相手を難なく送り出して快勝。取組後は「良かったと思います。土俵に上がる前は緊張したけど、上がったら落ち着いた。観客の声援? すごかった。力になったし、頑張ろうという気持ちになった」と振り返った。

 その相撲内容について、秀ノ山親方は「どういう相撲になるのか注目していたけれど、霧島らしさが十分に出ていた。低く踏み込んで、下からのねちっこい攻めで相手の力をそぐのが持ち味。懐が深くて前さばきのうまい琴ノ若に、相撲を取らせなかった。最初の相撲でも力を発揮できる精神面の強さも感じた」と高く評価した。

 新大関として注目を集める霧島は、初日に突然「右肋骨骨挫傷、約3週間の安静加療を要する見込み」との診断書を提出して休場。1年以上前から抱えていた痛みが悪化したことが理由だった。看板力士である以上、優勝争いに加わることが最低限の務め。今場所は全休して万全の状態に戻し、来場所の復活を目指すのが得策とみられていた。そうした中、あえて霧島は〝強行出場〟の道を選択。この日の取組後にも「違和感? 土俵の上ではなかった」と回復を強調した。

 秀ノ山親方は「本当は痛いはず。完治なんかはしてないと思う」と指摘し、新大関の思いを次のように代弁した。「自分も休場や再出場の経験があるけど、現役の力士にとってテレビで相撲を見ることほどつらいことはない。『どうして自分はこの場にいないのか』と思う。ケガは痛いけど、相撲は取りたい。そういう葛藤の中で、体がうずいてくるんですよ。新大関の場所であれば、なおさら。少しでも出られる可能性があるのなら、相撲を取ってみたいと考えるのが力士の本能」

 その上で「(ケガが悪化する前の)稽古がしっかりできたという自信があるだろうし〝これぐらいならいける〟という確信があるのでは。もともと責任感が強い力士。この日の相撲内容を見る限り、ある程度の星は挙げられる。まだ優勝の可能性もゼロではない」と期待を寄せた。

 この日から横綱照ノ富士(伊勢ヶ浜)が休場。新大関が唯一の看板力士を務める異例の状況で、霧島は千秋楽まで土俵を務めることができるのか。