6月に行われたフェンシングのアジア選手権(中国・無錫)女子フルーレで個人銀メダル、団体金メダルを手にした東晟良(あずま・せら=23、PEAKS)が本紙の単独インタビューに応じ、姉・莉央(24=明治安田生命)とダブル出場を目指す2024年パリ五輪への思いを激白した。5月からは約1年間に及ぶ選考レースがスタート。マイナースポーツ特有の苦悩を抱えながらも、東京五輪の悔しさをバネにメダル獲得を狙っている。

 ――最新の世界ランキングは3位。調子が上向いている

 東 ランキングを見た瞬間は驚いたのと同時に、これからもっと頑張らないといけないなという気持ちになりました。

 ――好調の要因は

 東 不安も多くて、成績を残せば残すほど、やっぱりもっと上にいきたいという気持ちが生まれたり、負けるのが嫌といいう気持ちになったりもします。でもそんな不安の中でも、楽しむことを忘れないというか、初心に戻ることを心掛けているので、自分のメンタルが安定しているのだと思います。

 ――初心に戻るとは

 東 ずっと最初から(元選手の)お母さんに言われてきた言葉で、それはもう中学校、高校、大学も今までずっと忘れないようにしています。やっぱり試合中も気持ちが不安定だったら、出せる技も出せなかったりするので、メンタルが安定しているおかげで出せる技が増えてきていることが勝ちにつながっているのかなと思います。

 ――個人で初戦敗退に終わった、東京五輪の悔しさも大きいのでは

 東 東京五輪で失敗した原因は、気持ちの問題だと思っていて、無観客の中で何か気持ちも上がらなくて、でも相手に勝たないといけないというか…。悔しい思いというか、すごい嫌な気持ちになって終わってしまったので、ああいう失敗はもう繰り返したくないです。

 ――パリ五輪は再び姉妹で出場したい

 東 やっぱり2人で一緒に出場したいし、その姿を周囲や両親、家族に見せてあげたいのが一番大きいですね。一緒に行きたいです。

 ――姉の存在は大きい

 東 海外遠征にも一緒に行くのですが、試合中にくれたアドバイスのおかげで勝てた時もあるし、あとは一緒にいて安心するので、海外でも。だからいいです(笑い)。

東晟良は「フェンシングをもっと有名にしたい」と意気込んだ
東晟良は「フェンシングをもっと有名にしたい」と意気込んだ

 ――姉妹で注目を集めているが、フェンシング界の現状は厳しい

 東 そうですね。アジア選手権や世界選手権だけでなく、W杯などでも海外に行くので、自分たちでお金を払わないといけない場面もあります。海外遠征は1回何百万円単位でお金がかかってしまうので、スポンサーさんが見つかってくれたらうれしいです。

 ――憧れのスポンサーは

 東 化粧品系とか憧れますし、興味があります。あとはご飯系も興味があります。食べるのが好きなので(笑い)。おすしもチョコレートもお肉も好きだし、なんでも好きです。嫌いなものは本当にないぐらいです。

 ――支援したいと思われる選手になりたい

 東 サッカーとか野球はメジャースポーツですし、やっぱりスポンサーの方もそういう選手につきたいと思います。だからこそフェンシングをもっと有名にしていきたいし、自分自身も応援したいなと思ってもらえるような選手にもなりたいです。そのためにも成績を残して、メディアなどにも出て自分やフェンシングのことを知ってもらって、ちびっ子たちが始めるきっかけにもなったらうれしいです。

 ――パリ五輪での目標は

 東 個人、団体でメダル取ることです。金メダルとは正直言えなくて、メダルが取れたら自分の中ではうれしいです。

☆あずま・せら 1999年8月20日生まれ。和歌山県出身。フェンシング選手だった母の影響を受け、小学4年から競技を始める。高校2年時の2016年アジアジュニア・カデ選手権で金メダル。17年に全日本選手権を女子史上最年少の18歳で制した。18年W杯アルジェリア大会では、個人種目で自身初の表彰台となる銀メダルを獲得。姉・莉央と日本フェンシング史上初の姉妹出場となった21年東京五輪は、団体で6位入賞を果たした。157センチ。