歯科の矯正治療をめぐる詐欺まがいのトラブルが起きている。その種の詐欺にかからないためのアドバイスを歯科医に聞いた。
【無料でたくさん集客する方法は成立するのか?】
被害者は歯列矯正が実質無料だと勧誘され「後で全額返金するから」と高額料金を前払いさせられ、返金されなかったことを前回説明した。
「歯科の矯正治療をめぐる今回のトラブルが詐欺かどうか微妙なのは、広告宣伝のために無料でサービス提供するという手法自体はあり得るからです」と、歯列矯正やインプラントなど審美的な歯科治療に定評がある海老沢聡・海老沢歯科医院(東京都杉並区)院長は説明する。
十数年前にベストセラーとなった「フリー」という本は、無料のものから価値を生み出すことを推奨していた。問題の歯科医院も、価値の高いものを無料で提供しようとしてモニターモデル制度を始めたのだと好意的に解釈できるのだろうか。
歯列矯正の患者がたくさん集まり、症例が多ければ多いほど、器材などをメーカーから歯科医が仕入れる料金は割引される。どんどん患者が集まればモニターモデル制度は行き詰まらず、患者に返金されたのかもしれない。しかし、無料で症例をたくさん集めるのが目的なら、前払いさせず最初から無料で治療する方がむしろいいはずだ。
前払いで患者から集めた資金を運用に回すと言っていたにもかかわらず、実際は資金運用に回されなくなっていた。これは金融の世界のポンジ・スキームという手法とほぼ同様である。ポンジ・スキームは、運用益で配当するとして資金を集めるが、実際は集めた資金を既存の出資者への配当に充てて事業がうまく行っているようにだます詐欺手法のことだ。
【「後から返すから最初に支払え」はおかしい】
むろん今回のトラブルでは問題の歯科医院と、手を貸したコンサル会社が糾弾されるのは当然だ。だが一方、歯列矯正器具メーカーはトラブルとは無関係という立場だが、機材の販売代金から通常通りの収益を得ている。金銭的被害を受けた人が多い中では道義的には一端の責任があるかもしれない。被害者たちは矯正器具メーカーに器具を作ってもらう権利はあるが、別の歯科で治療を引き継いでもらえば新しい先生に治療費を払わねばならない。
「今回は歯列矯正が舞台でしたが、後から返すからと言って最初にお金を集める手法は最近いろいろな業界で見られますね。それは、ほとんど詐欺だと考えた方がいいです」と海老沢院長は言う。どんな業界でも、どんな商品やサービスでも、あり得る話だ。仮想通貨の業界でも、そうした手口の詐欺があったとされる。
「歯列矯正では、今回の手口の亜流として無料ではなく30万円などの微妙な料金で集客を図る業者が出現しています。詐欺とばかりは言えない料金設定なんです」
詐欺だとしたら、より巧妙なわけだ。
海老沢院長は「常識的に、後からお金が入ってくるからと言って多額のお金を払わされるのは気をつけるべきです」とアドバイスする。この種の常識は、かつてのネズミ講とか豊田商事などの事件を知っている世代だと「あの詐欺事件と似た話だな」とピンとくる。そんな手口がまた簡単に通用するように最近はなっているのだ。ご注意!











