【取材の裏側 現場ノート】駆け出し記者だったころ、J1浦和を取材した。20年以上前の話だ。MF小野伸二(現J1札幌)がおり、2002年日韓W杯も控えてサッカー熱が高まっていた時。スポーツ新聞各社の記者が、必ず浦和の大原サッカー場に張り付いていた。

 偶然にも、私のような新人記者が多く浦和を担当していた。ウロウロして、スタッフの皆さんを困らせたこともあったと思う。そんな中、私たちに「今、〇〇あっちに行ったよ~」「今日は誰の取材に来たの?」とマメに声を掛けてくれる人がいた。ユースチームのコーチだった。トップチームほど関わりがない記者たちを邪険にするどころか、気を配ってくれた。こちらは毎日会社で怒られ、現場ではベテラン記者の先輩方についていけず、苦しい日々。ちょっとしたひと言がありがたかった。

 今、その人が大一番に挑もうとしている。7月のオーストラリア・ニュージーランド女子W杯に臨む、なでしこジャパンの池田太監督だ。〝熱男(アツオ)〟と呼ばれる熱血漢で、選手に前向きな声掛けをすることで知られている。「ああ、明るく、分け隔てない人だったな」と、浦和時代を思い出しながら、ここまでの活躍を離れた場所から見ていた。

J1浦和で現役時代の池田監督(左=1993年)
J1浦和で現役時代の池田監督(左=1993年)

 今年に入り、池田監督に当時世話になったことを伝える機会があった。「懐かしいですね」というリアクションを期待していたら「ええ? あれ~? そうだったっけ~?(笑い)」。正直に答えるあたりも人柄だ。我々への声掛けは、本当に自然な振る舞いだったのだろう。

 19年フランスW杯は16強、21年東京五輪では8強止まりと元世界女王なでしこジャパンは近年、苦しい道のりが続く。難しい状況でバトンを託された池田監督はメンバー発表の会見で「厳しい戦いの中でも、我々なでしこジャパンがあきらめずに戦っていく、そういった熱い試合、熱い一瞬一瞬をみなさんとつくり上げていきたい」と語った。

 熱い戦いで勝利を積めば、注目度も一気に上がっていくだろう。〝気配りの熱男〟率いるなでしこたちの活躍に期待したい。