陸上女子の田中希実(23=ニューバランス)には、大きな転機となったレースがある。
一昨年の東京五輪1500メートルで8位入賞を果たすなど、着実に階段を上ってきたが「五輪の時は怖いものなしだったが、今は怖さを知っている」と吐露していたこともある。メンタル面で苦しい時期を過ごし、思うような走りができない日々が続いた。
しかし、先月21日に行われたセイコー・ゴールデングランプリ(神奈川・日産スタジアム)の1500メートルでは、最後の1周はギアを入れ替えてトップに立つと、粘る海外勢を振り切って優勝。依然の力強い姿が帰ってきた。1日の取材では「ゴールデングランプリでラスト1周にこだわる走りをしたので、その辺りからやっとトータルタイムであったり、順位というよりも、自分がレースの中でどういうことにチャレンジしたいかという集中した走りできた」と心境の変化を口にした。
大会後には、日本選手権に向けて岐阜・御嶽山の施設で合宿を敢行。「タイムに縛られずに、いかに動きを良くするかであったりとか、走ること自体を楽しみながら合宿ができた。そこはゴールデングランプリから徐々に、気持ちが高まってきていると思う」。言葉通り、この日の日本選手権(大阪・ヤンマースタジアム長居)同種目予選は、序盤から先頭で積極的にレースを進め、最後まで他を寄せ付けない走りを披露。4分15秒19の1組1着、全体でも1位のタイムをマークし、2日の決勝にコマを進めた。
明るい兆しが見えてきた中で、今後はラストスパートに磨きをかける方針だ。「ラスト1周で60秒を切るという部分は意識したい。国内のレースだと、難しいというか、自分で最初から行くとしんどいかなというのはあるけど、そこの殻を破るのも、またひとつ世界陸上に向けての布石になるとも思う」と大舞台への展望を描いている。
パリ五輪までは約1年あまり。進化のヒントを探し、世界のトップを追いかけていく。












