現役の戦車がなかった理由はなんだったのか。ソ連が第2次世界大戦でナチス・ドイツに勝利したことを祝う「対ドイツ戦勝記念日」の軍事パレードが9日にモスクワ中心部の「赤の広場」で行われたが、その内容に驚きの声が上がっている。

 プーチン大統領は「ロシアに対する本物の戦争が行われている」と演説。侵攻したウクライナに軍事支援を続ける欧米を非難した。同時にロシアが国の運命を左右する転換点にあるとの認識を示し、侵攻を続ける考えを明確にした。

 パレードには1万人を超す軍関係者が参加。大陸間弾道ミサイル(ICBM)や対空ミサイルシステムなど最新兵器が赤の広場を行進し、ロシアの軍事力を誇示した。

 もっとも奇妙な点もあった。この軍事パレードはソ連崩壊後で最も重要視される国家行事だとされる。例年、最新鋭戦車T―14や主力戦車T―90などが何十台、何百台も披露される。ところが今回は第2次世界大戦で使用された保存車両の旧式T―34の1台のみ。現役戦車なしという異例のパレードだった。また、装甲兵員輸送車、トラック、大陸間弾道ミサイル発射装置など、約50台未満の軍用車両が市内を通過したが、前年は200台以上だった。今回はウクライナ侵攻中で、パレードに戦車、軍用車両を出す余裕がないという指摘もあるが、そうではないようだ。なんとプーチン大統領が暗殺を恐れているというのだ。

 米国議会が出資し、ロシア・東欧を取材対象としているメディア「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」は歴史家マクシム・クザフメトフ氏の分析として、「プーチンはエジプトのサダト大統領の二の舞いになることを恐れている可能性が高いです。装甲車両の一つが実弾を発射していたらどうしますか? プーチンは裏切りをいたるところで見ています。彼はそれを恐れています」と指摘した。

 サダト大統領は1981年、カイロで第4次中東戦争の戦勝記念日の軍事パレードを観閲中、暗殺された。パレード中の砲兵車両がエンジン故障を装い、大統領の前で停止。乗車していたイスラム復興主義過激派の暗殺者が銃撃し、大統領を殺害した。

 もちろん、複数の欧米メディアが「パレードに出ているプーチンは影武者。暗殺を恐れている本物は地下のシェルターに隠れている」「プーチンは体調が悪化しすぎて、人前に出られない。パレードのプーチンは影武者だ」などと真偽不明の指摘をしている。しかし、影武者が暗殺されたとしても、表向きには「プーチンが死んだ」となり、権力闘争、クーデター、国民による革命が起きかねない。次の権力者が本物のプーチン氏の居場所を特定し、葬ると予測される。いずれにせよ暗殺されるわけにはいかないのだ。

 パレード縮小の理由は、プーチン氏が暗殺を恐れているからかもしれない。