岸田文雄首相に向かって爆発物が投げられた事件をめぐって激しい議論が交わされている。逮捕された木村隆二容疑者(24)がどんな動機や背景で犯行に及んだかは現在捜査中だが、一方で原因探求を求める意見に自民党国会議員が「100%間違っています」とツイートして話題になっている。原因を調べてはいけないとはどういうことか。
議論になっているのは、ソフトウエア開発会社「サイボウズ株式会社」の青野慶久社長が16日につぶやいたツイートだった。事件を受けて青野氏は「どうして日本国民がわざわざ命懸けで犯罪に走るのか。テロが起きる原因からなくしていきましょう」と指摘していた。
その後も連続して投稿し、「Q.加害者を肯定していない? ↓肯定していません。悪いのは加害者であり、被害者は悪くありません。まずこれは大前提です。そして加害者と被害者を減らしたいのです。そのために加害者が犯罪を起こした原因を探求し、課題を設定して原因を減らす必要があるという考えです」と原因探求を訴えた。
これに反応したのが自民党の武井俊輔衆院議員だ。武井氏は青野氏のツイートに「申し訳ありませんが100%間違っています。テロによって言論を封殺する者を寸分でも肯定することを誘発することは、結果としてテロリストを正当化することと同義です」と疑問を呈した。
両者は「原因探求が正当化と同義だという理屈がよくわかりません」(青野氏)、「民主主義の根本を揺るがすテロ行為は絶対悪であり、原因は100%加害者の行為によるものです」(武井氏)とやりとりを重ねるも平行線をたどった。SNSではこうした木村容疑者の動機や背景事情を調べるかどうか、それらを公表するかどうかで議論が交わされている。
公表すべきではないという主張が一定の支持を集めるのも安倍晋三元首相を殺害した山上徹也被告の例があるからだ。同被告の動機に、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の問題があることが報じられた。そのことで同情が集まり、英雄視されたと感じる人もいる。実際に教団に批判が集中し、被害者救済を図る新しい法律が成立。ある意味、テロを行った山上被告の狙い通りになったとも言える。それゆえにテロを起こした人物の背景を公にすることで模倣犯を生むなど問題が起きるのではないかという見方もあるわけだ。
それでも動機や背景の原因探求は必要なのか。探求すべき派の紀藤正樹弁護士に聞いた。「法律の専門家からすると、動機や背景事情は有利な情状にもなるけど、不利な情状にもなる。即座に検討すべきは共犯がいるかどうか。いたらまた犯行を重ねる可能性がある。すぐに調べるべきだが、これも背景事情ですよ」と説明し、調べて当然と主張した。
木村容疑者は組織的な背景のないローンウルフ型の可能性が指摘されている。
「欧米でもどうして(犯行をするまで)思い込むのかっていう思考過程が問題になっている。そこに説明がつかないと、もう一度別の誰かがテロを起こす可能性がある。ローンウルフの背景を突き詰めないでどうやってテロを防ぐのか」(同)
政治家に原因探求を否定する声があるのは「権力側はどうせ情報が入るから」と指摘。「彼らは検証できるけど、国民はできないですよね。原則としては知る権利や表現の自由を満たすように志向すべき。調べちゃいけないとなったら情報統制になってしまう」(同)
山上被告が英雄視されているとの見方にも懐疑的だ。
「されてないでしょう。ごく一部にそういう人がいたとしても大部分はそうじゃない。テロには貧困によるテロがあるが、貧困の連鎖を止めないと本質的にはテロは終わらない。原因究明は治安対策の基本です」(同)
木村容疑者は黙秘を続けているという。議論はまだまだ過熱しそうだ











