症状がほとんどなく原因もハッキリと分かっていない前立腺がん。進行すると骨に転移しやすいというから詳しく知っておきたい病気の一つだ。見つけ方や治療方法を泌尿器科医の高橋亮医師に教えてもらおう。

 ――前立腺がんの原因は何なのでしょう

 高橋医師(以下高橋)結論的にはほとんど分かっていないんです。可能性として肥満、メタボリック症候群や糖尿病、前立腺肥大症など慢性的に前立腺に炎症が起こっている人、あとは生活習慣で食事が偏っている人や嗜好品を使う人はなりやすいのではないかと言う人もいますが、それとは相反する研究結果も多くあるので要因を特定するのは困難だと言われています。実際、普段の診療の中で患者さんに前立腺がんの理由を聞かれた際には多くの泌尿器科の先生は「よく分からない」と答えていると思いますね。

 ――どのような症状がありますか

 高橋 症状は基本的にほとんどありません。しかし、たまに尿が出にくい、頻尿の症状が出る場合があります。前立腺がんは進行すると腰のあたりの骨によく転移するのですが、転移した後に腰痛として痛みが出たりします。

 ――病院で前立腺がん
の診断を受ける人は何をきっかけに受診するのでしょうか

 高橋 健康診断でPSAという血液検査の数値が高かった人や頻尿や尿が出にくいなどの症状で来られる方が多いですね。後者の方には病院で血液検査を行いPSAの数値が高いと分かれば検査をして前立腺がんが発見されます。症状がないのでPSAの数値をチェックすること以外では前立腺がんを見つけることは困難ですね。

 ――検査方法は血液検査だけということですか?

 高橋 そうですね。PSAの数値が重要になりますので、皆さんにはぜひ一度は健康診断などで採血を行っていただきたいと思います。なお、自治体の無料の健康診断や、企業健診ではPSAは追加料金を払うオプション検査であることが多いため、健診の際にはPSAの測定が含まれているのか確認が必要です。その検査で数値が高いことが分かればMRIで検査を行い、がんが疑われる影があると精密検査を行います。または、肛門に指を入れて指診する直腸診察も有効な検査の一つです。

 ――どのような治療を行うのでしょう

 高橋 前立腺がんが転移していて進行している人の場合は薬物治療をします。それほど進行していない人の場合は、若い人であれば手術を行うか放射線治療に進むかを選ぶ形になります。手術は前立腺を全摘出する手術です。放射線治療は放射線を体の外から当てる方法や放射線物質を出す小さな棒のようなものをいくつか体に埋め込む治療、放射線により副作用を少なくする治療があります。高齢の方だと手術をするのは難しいと思うので薬物治療を行います。

 ――治療方法は選ぶことができますか?

 高橋 そうですね、1人の先生だけでなくほかの先生にも診てもらって自分が納得いく治療や説明を受けることが大切です。そのためにもいくつかの病院を受診することをオススメします。 

 ☆たかはし・りょう 神奈川県出身、2003年日本医科大学卒業。日本泌尿器科学会指導医・専門医。ED、早漏、AGAなどをはじめ、前立腺がんなど泌尿器科にまつわる疾患全般を扱う動坂下泌尿器科クリニック(東京・文京区)院長。