【Buzzの本懐】ユーチューブをチェックしている中で、狂犬病の予防接種会場で奮闘する犬と飼い主の動画に触れたことはないだろうか。注射にいち早く気付く犬や、平気で獣医に愛嬌を振りまく犬、そして何とか制御しようとする飼い主…。そんな犬と人のドタバタ劇を撮影した動画で人気を集めているのが、富山県の映像制作会社「とやまソフトセンター」だ。

 今回は動画制作の担当者に、ユーチューブを始めたきっかけやバズるまでの経緯を取材。さらに華々しい再生回数に隠れた、クリエイターとしての思いや複雑な心境についても、じっくりと話を聞いた。

 ――まずはユーチューブを始めた経緯を教えてください

 制作担当者(以下担当)我々の中で何らかの情報発信する必要があるだろうということは考えていましたね。ただ、ユーチューブを始めたと言ってもアカウントを取っていただけで、当時は大した動画は上げていなかったんです。戦略を持って動画を上げようとか、活動しようとはしていませんでした。

 ――その中で富山県内の狂犬病予防接種会場の動画を投稿されました。どのような目的で撮影していたのですか?

 担当 うちはケーブルテレビ向けの番組を制作しているのですが、その中には自治体が運営している局もあるんですよ。自治体は犬の集団予防接種の運営を国から任されていますから、そのお知らせ動画を作ってほしいという依頼が毎年春にあって撮影していました。

逃げようとするワンちゃんを意に介さず引っ張る飼い主
逃げようとするワンちゃんを意に介さず引っ張る飼い主

 ――その会場でドタバタ劇が繰り広げられていたと

 担当 当然ワンちゃんと飼い主さん、獣医さんの思いが完全にすれ違うシーンが多く出てきますから。それらを過去の動画から集めてくれば、きっとほほ笑ましく見ていただけるだろうし、接種率向上の一助になるのではないかと思って動画を投稿しました。

 ――2021年の8月に公開されましたが、すぐに〝バズった〟のですか?

 担当 投稿当初は目立った動きはありませんでしたが、9月中旬から急に視聴回数が増えまして、そこから1か月で100万回再生を突破しました。

 ――多くの方に見つかるきっかけがあったのでは

 担当 何かメディアで取り上げられたということはありませんが、偶然他の民放が運営しているユーチューブチャンネルで、チワワが狂犬病の注射に大騒ぎするという動画がバズったんです。たぶんそちらをご覧になった方の画面に、関連動画として上がってきたことが大きいんじゃないかと思っています。あくまで我々の推測ですが…。

 ――実際に人気が出るかもしれないという手ごたえはあったのですか?

 担当 ご覧になった方々の多くは楽しんでくださるだろうなとは思っていました。ただ、一人ひとりには満足していただいても、これだけ再生回数が伸びるとは思っていませんでした。

 ――反響も大きいのでは

 担当 それは最近になってからです。関係のない取材に行っても「あの予防接種の?」と言われることは増えました。

 ――接種会場で声をかけられることも…

 担当 あります。「いつも見てます」という声は昨年より多かったですね。「うちの子が注射するところを撮影してください」という〝逆指名〟もありました。

ファンから声をかけられる
ファンから声をかけられる

 ――着実に大きなコンテンツになっていますね

 担当 もちろんまだまだ行けるところはあると思うのですが、実はその一方で「知る人ぞ知る」コンテンツにしたいという思いもありまして…。

 ――プライバシー的な問題でしょうか

 担当 動画をアップロードするわけですからそこは了解を得ているのですが…。地方の制作会社がやっているからこその、「メジャーになりすぎない良さ」もあるのかなと。視聴者の方からも「このままでいてほしい」という声をいただきますから。

 ――深夜番組がゴールデン昇格する際の反応に似ています

 担当 一部の人だけが知っている雰囲気を楽しんでほしいということもあり、あまり取材は受けないようにしているのですが。我々も普段取材をお願いしている立場ですから受けないのもしのびないと思いまして。

 ――職人集団ですね

 担当 あとは我々が映像制作会社ということをご存じでない方が今でも多くいらっしゃるので…。自治体の職員に間違われることもあって最初は訂正していたのですが、途中からは「よくわからない団体」でもいいやと開き直りまして。それが知る人ぞ知るチャンネルでいたいと思った理由の1つでもあります。 

れっきとした制作会社だ
れっきとした制作会社だ

 ――ちなみに登録者にはどのような方が多いのですか?

 担当 一番ご覧になっている年齢層は25~35歳です。その次は45~55歳で、25~55歳の方が全体の8割を占めています。男女比では女性が65%で多めですね。

 ――かなり幅広い視聴者層ですね

 担当 ただスタッフには中年層も多いので、50代以上にウケやすい作りにはしています。例えばワンちゃんが飼い主さんの胸で暴れているところを〝ハトヤ状態〟と表現していまして。ある程度の年齢の方でないとリアルタイムでハトヤさんのCMを見ていないと思うんですよ。

 ――確かに〝懐かしのCM〟という印象があります

 担当 その点はジャストの世代の方に笑ってもらえればいいし、若い方にはぜひ検索していただけたらな、と。変にこちらから説明することはせずに、分かる人に分かってもらえればいいかなと思っています。

 ※後編では普段の撮影方法や動画に多く登場する柴犬の魅力についても話を聞きます。

【とやまソフトセンター】2000年に創業した、富山市に本社を置く映像制作会社。ケーブルテレビ局に向けた動画制作・映像提供を主な業務とする中で、2021年にユーチューブに投稿した狂犬病の予防接種会場を紹介する動画が大ヒット。以降も富山県内の接種会場で繰り広げられる犬と飼い主たちのドタバタ劇を撮影・投稿し、根強い人気を誇っている。

 ユーチューブチャンネルは【https://www.youtube.com/@t-soft-center】