新横綱誕生なるか。大相撲春場所(3月12日初日、大阪府立体育会館)では大関貴景勝(26=常盤山)の綱取り挑戦が注目を集める一方で、関脇以下の力士たちも賜杯奪取を虎視眈々と狙っている。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(39=本紙評論家)による連載「がぶりトーク」では貴景勝の綱取りの行方を占うとともに、待ったをかける〝3人の刺客〟をリストアップ。さらに、今場所からの復帰を視野に入れる横綱照ノ富士(31=伊勢ヶ浜)についても言及した。

【秀ノ山親方・がぶりトーク】読者のみなさん、こんにちは! 今回は、ひと足早く春場所の行方を占ってみたいと思います。一番の見どころは、もちろん貴景勝の綱取りです。優勝した初場所では闘志を前面に出しながら、どんな相手だろうと立ち合いから相手を突き起こして自分のリズムで攻める相撲を貫いていた。貴景勝の強みは、自分の形が確立されていて、相撲に迷いがないこと。

 綱取りの場所では内容も問われる中で、自分の相撲を最後まで取り切れれば、おのずと結果はついてくるはずです。優勝を3回経験して「横綱に一番近いのは自分だ!」という自信を持っているだろうし、先場所も一人大関で優勝したように重圧に負けない心の強さがある。大事な序盤戦で星を落とさずに乗り切れれば、綱取りを引き寄せる雰囲気が出てくると思います。

 貴景勝にとって手ごわい相手になりそうなのは、霧馬山、豊昇龍、琴ノ若。霧馬山は足腰の強さがあって、前まわしを取ったり食いつく相撲になれば力を発揮する。初場所は小結で11勝して、今回は新関脇。さらに上を目指す気持ちになっていると思うし、上位で相撲を取ることにも慣れて、もうひと皮もふた皮もむけそうな感じがします。

 豊昇龍は先場所、左足をケガしてから再出場して勝負に対する執念を見せましたよね。体重が増えて馬力がついたことで相撲のバリエーションが増えてきているし、番狂わせがあってもおかしくない。琴ノ若は先場所で貴景勝を倒して、その後も我慢して白星を積み重ねて勝ち越した。体が大きい割に器用で前さばきがうまいし、琴勝峰が優勝を争って「次は自分が」と思っているはず。この3人は春場所の優勝争いでも貴景勝の対抗馬になり得るとみています。

 それから、照ノ富士の動向も気になるところですよね。まだ春場所で復帰できるかは分かりませんが、出場すればもちろん優勝候補の本命です。ただ、久しぶりの本場所で相撲勘が戻っているかが心配なことと、手術を受けたヒザが立ち合いの一瞬の馬力に耐えられるかどうか。そのあたりを探りながらの土俵になるかもしれません。

 貴景勝の綱取りに話を戻すと、横綱が出場するか、しないかで戦い方が変わるわけじゃない。平幕に勝っても、横綱に勝っても、同じ1勝。横綱に勝てば2勝つくわけではないので。結局は自分との戦いなってくるし、最後までブレずに自分の相撲を取り切れるかどうか。本人も、そこの部分だけに集中していくと思います。

 いずれにしても、貴景勝にとっては地元の関西で挑む綱取りになる。地元ファンからの声援は何よりも力になるし、大いに場所が盛り上がることを期待しています。それではまた!

(元大関琴奨菊)