大横綱の秘密とは? 元横綱白鵬の宮城野親方(37)が、28日に行われた引退相撲(東京・両国国技館)の断髪式で力士の象徴であるまげに別れを告げた。元大関琴奨菊の秀ノ山親方(39=本紙評論家)による連載「がぶりトーク」では、その大横綱の〝秘話〟を大公開。元白鵬が来日直後に体験した「自販機ショック」やライバル力士を丸裸にする「相撲脳」、異次元の「スローモーション相撲」まで驚きのエピソードを一挙に紹介した。

【秀ノ山親方・がぶりトーク】読者のみなさん、こんにちは! 今回のテーマは「横綱白鵬」です。28日の断髪式では、私も特別な思いではさみを入れさせていただきました。白鵬関とは土俵での一番一番の勝負以外にも、たくさんの思い出がある。

 その一つが、東日本大震災の被災地を慰問した時(2011年6月、岩手)、土俵入りで太刀持ちを務めさせてもらったことです。あの時は自分たち力士が勇気づけに行ったはずなのに、逆に被災者の方々から「頑張って」と勇気づけられた。感謝の気持ちを込めて土俵入りした横綱の姿が、とても印象的でしたね。

 その白鵬関から、モンゴルから来日してカルチャーショックを受けた話を聞いたことがある。飲み物の自販機で「いらっしゃいませ」とかしゃべるやつがありますよね。横綱は「中に誰か入っている!?」と驚いて、その自販機をずっと見ていたんだって(笑い)。「日本に来て自販機がしゃべったのは本当にビックリした」と言ってましたね。そうした環境の違いから日本の言葉や食事、力士の生活に慣れるだけでも大変なのに、あれだけの実績を残した。すごいことだと改めて思います。

 現役時代は勝ち抜かなければいけない相手であり、目標でもあった。強く当たってもゴムのような柔らかい体で力を吸収されたり、逆に鋼の塊にぶつかるように押し返されたり…。つかみどころがなくて、とにかく当たりづらかったですね。スピードや馬力、器用さも兼ね備えている中で、何より驚かされたのが横綱の「相撲脳」です。

 誰よりも自分と相手を研究して、徹底的にシミュレーションを重ねて相撲と向き合っていた。白鵬関の現役最後の場所(21年名古屋場所)で正代を相手に仕切り線から下がって立った相撲がありましたよね。その理由が気になっていて、白鵬関が引退してから聞いてみたんですよ。

 横綱の答えは「何回シミュレーションしても、いつもの立ち位置からだと正代に踏み込まれて相手が有利になるイメージばかりだった。それで仕切り線から少し後ろに下がって立ってみたら、いいイメージがわいた。脳が全部、指令を出すんだよ。脳に悪いイメージがあったら、その通りになる。いいイメージがあれば負けることはない」。そこまで深く考えてるんですね。

 それから、土俵上での勝負勘や集中力も突き抜けていた。これも白鵬関から引退後に聞いた話ですが、こんなことを言ってました。「俺はさ、土俵上では相手を刃物だと思って戦っていた。だから相手がスローモーションに見える時が結構、多かったんだよ。栃煌山に後ろにつかれた時(19年春場所)もゆっくりと見えていたから、すごく余裕があって全然、危なくなかった」。どれだけ極限状態で相撲を取っていたのかって話ですよね。

 そういう力士と同じ時代に土俵で戦えたことは自分自身の財産だし、今後の指導にも生かしていきたい。白鵬関とは親方同士、また違う形で相撲協会を盛り上げていけるようにやっていきたいですね。それではまた!

(元大関琴奨菊)